「奇跡の復活」から31年 オールカマーは「トウカイテイオー一族」の2頭が主役だ
名馬トウカイテイオー
JRA発行の雑誌「優駿」の9月号で発表された「未来に語り継ぎたい名馬BEST100」で、上位にランクインしたトウカイテイオー。昭和生まれの馬に限れば、オグリキャップらと並んでの上位だから、とりわけオールドファンにとって忘れられない馬であることは間違いない。 【神戸新聞杯2024 推奨馬】回収率100%超えなど好データ目白押し!前走タイムは歴代屈指 SPAIA編集部の推奨馬を紹介(SPAIA) 簡単に現役時代を振り返ってみよう。通算成績は12戦9勝。91年の皐月賞、日本ダービーを制し、父シンボリルドルフに続く無敗の二冠制覇を達成した。 その後は度重なる骨折に苦しみながら、92年のジャパンCで3つ目のGⅠタイトルを獲得した。続く有馬記念で11着に敗れた後、体調不良と骨折が重なって再び休養へ。 約1年ぶりの実戦となった93年の有馬記念では4番人気に甘んじたが、先に抜け出したビワハヤヒデをとらえて勝利。1年ぶりの長期休養明けGⅠ勝利記録を樹立した一戦は「奇跡の復活」として語り継がれている。 このように競走馬としては偉大だったトウカイテイオーだが、種牡馬として「血を残す」戦いでは苦しんだ。 産駒はJRA重賞を7勝。GⅠはトウカイポイントが02年のマイルCS、ヤマニンシュクルが03年の阪神JFを制したが、それぞれセン馬、牝馬だったため、種牡馬にはなれなかった。 唯一、地方で6勝を挙げたクワイトファインが後継種牡馬として登録されているが、サイアーラインを伸ばすのは厳しい状況となっている。
オールカマーに出走する「テイオー一族」
ただし、トウカイテイオーの名前が血統表から消えたわけではない。現役で最も注目されるのはレーベンスティールで、JRAの現役馬に僅か8頭しかいない「母の父トウカイテイオー」の1頭だ。 昨年のセントライト記念を制し、その血を引く馬としては19年中山大障害のシングンマイケル以来で4年ぶり、平地に限ると15年サウジアラビアロイヤルCのブレイブスマッシュ以来で8年ぶりとなるJRA重賞制覇を果たした。 その後、香港ヴァーズで8着、新潟大賞典で11着と大敗を喫したが、エプソムCで2つ目のタイトルをゲット。今週のオールカマーで重賞3勝目、さらには秋の大舞台でGⅠウイナーの称号を勝ち取ることが期待される。 いずれは種牡馬になれるポテンシャルを秘めているので、テイオーの血をつなぐという意味では救世主といえる存在だ。 そしてオールカマーにはもう1頭、テイオーファンなら見逃せない馬がエントリーしている。それはGⅡで馬券圏内2回の実績があるロバートソンキーで、祖母のトウカイテネシーの全兄がトウカイテイオーなのだ。 テイオーに似たのか、これまで故障で何度も長期休養を強いられながら、そのたびに復活を遂げてきた。1年半ぶりだった前走のジュライSこそ11着だったが、初ダートだったので参考外。2年前のオールカマーで2着に健闘しているように、中山芝2200mへの舞台替わりは大きなプラスなので、好勝負になっていい。 奇跡の復活から31年、思い出の中山で〝テイオー一族〟のワンツーフィニッシュに期待だ。 《ライタープロフィール》 逆瀬川龍之介 国内の主要セール、GⅠのパドックはもちろん、時には海外のセリにも足を運ぶ馬体至上主義のライター。その相馬眼を頼りにする厩舎関係者、馬主は少なくない。一方、マニアック、かつ実用的なデータを駆使して、ネット媒体や雑誌などにも寄稿するなど、マルチな才能を持っている。
逆瀬川龍之介