猫を“ひき逃げ”、動揺して何もできなかったドライバーの後悔 どう対処すればよかった?
●警察や道路緊急ダイヤルへの連絡も検討を
――猫が飼い猫だった場合、車の前に飛び込んできて避けられなかったとしても、飼い主に対して責任を負うのでしょうか。 損害賠償責任が生じるのは、ドライバーに故意または過失が認められる場合に限定されます。 したがって、急に猫が飛び出してきたような場合には、結果回避可能性がなく、過失がないと評価される場合も多く、原則として、損害賠償責任を負わないものと考えられます。 逆に、猫がゆっくりと道路を横断していたところをわき見運転などによって、その猫をひいてしまったような場合には、前方不注視による過失が認められ、損害賠償責任を負う可能性があります。 ――過去に類似の事例等はあったのでしょうか。 猫をひいて放置したことによって報告義務違反等によって刑事処罰を受けたという事例は、私が調べた限りでは見つかりませんでした。 個人の感覚的には、猫をひいてしまってそのままその現場を立ち去ってしまったというケースで、報告義務違反等で刑事処罰まで受けるということは極めて稀なのではないかと思います。 というのも、猫は突然飛び出してくることも多いですし、相当程度に小さいため、一般論として、「猫をひいたという事実を認識できなかった可能性」が認められるという事情から、「故意に」報告義務等を怠ったとまでは断定できないと考えられ、起訴するにまでは至らないのではないでしょうか。 また、猫をひいてしまったことによる交通への影響も通常は極めて小さく、刑事罰を科すまでの必要性も認められないとも考えられます。 ──相談者としては時間が経過してもなお不安に感じているようです。 猫をひいてしまった場合、死なせてしまったかもしれないという感覚が非常に後ろめたい気持ちにもなることもあるかとは思いますので、仮に猫をひいてしまったことに気が付いた場合には、一応警察への報告等をしていただき、適切な対応の指示を仰いだ方が良いのではないかとは思います。 また、猫の死体などを発見した場合には、道路緊急ダイヤル(#9910)等に連絡していただくのもよいのではないかとは思います。 【取材協力弁護士】 坂口 靖(さかぐち やすし)弁護士 プロスペクト法律事務所 大学を卒業後、東京FM「やまだひさしのラジアンリミテッド」等のラジオ番組制作業務に従事。その後、28歳の時に突如弁護士を志し、全くの初学者から3年の期間を経て旧司法試験に合格。弁護士となった後、1年目から年間100件を超える刑事事件の弁護を担当。以後弁護士としての数多くの刑事事件に携わり、現在に至る。YouTube「弁護士坂口靖ちゃんねる」https://www.youtube.com/channel/UC0Bjqcnpn5ANmDlijqmxYBAも更新中。