[懐かしの名車] ホンダNSX(初代):和製スーパーカーが世界に挑戦
走りに特化したモデル「タイプR」は、ホンダのリアルスポーツの源流
一方で、世界一の運動性能を決定づける、4輪すべてを専用設計したタイヤの減りが早いという指摘など、スーパースポーツのなんたるかを理解していない発言でしかなかった。そんな的外れな論評に反撃するかのように、上原氏は「それならこれはいかが?」とばかり、走ることに特化して余計な装備をはぎ取ったNSXタイプRを作り、外野を黙らせた。彼はその後も、インテグラタイプRやS2000も開発し、ミッドシップ/FF。/FRという3種の駆動方式のスポーツカーを開発した、世界でも希有なエンジニアになった。 【HONDA NSX TYPE-R(1992年)】●全長×全幅×全高:4430mm×1810mm×1160mm ●ホイールベース:2530mm ●車両重量:1230kg ●エンジン(C30A型):水冷V型6気筒DOHC2977cc ●最高出力:280ps/7300rpm ●最大トルク:30.0kg-m/5400rpm ●燃料タンク容量:70L ●10モード燃費:9.2km/L ●トランスミッション:5速MT ●最小回転半径:5.8m ●タイヤサイズ:前205/50ZR15 後225/50ZR16 ●乗車定員:2名 ◎価格:970万7000円 退職後も、彼の下には世界のNSXやS2000のオーナークラブから講演やミーティングへの招待があり、どこに顔を出しても大歓迎されると幸せそうに語っていた。理想の小型車のスタディから始まった民主的なスーパースポーツカー・NSXは、登場から四半世紀を過ぎてなお、彼の願い通り、世界各地で愛されているのである。 ◆C30A型エンジン:軽量/コンパクトで高性能の新開発3.0L90度V型6気筒24バルブDOHC VTECエンジンを搭載。吸排気特性に優れたビッグボア(90mm)/ショートストローク(78mm)とし、高出力化のキーである高圧縮比10.2をセンタープラグのペントルーフ形燃焼室で可能としたスポーツ型エンジンとなっている。3L自然吸気エンジンとしてはトップクラスの最大出力280ps/7300pm(5速車ネット値)、最大トルク30.0kg-m/5400rpmを達成している。 さらに、エンジンの高回転化を達成するためチタンコンロッドを採用。鍛造成形性と切削性を大幅に改善した新しいチタン(3アルミ2バナジウムサルファー)を開発する ことで実用化に成功し、約700回転分の高回転化を実現している。加えて、ホンダの先進技術であるVTEC(可変バルブタイミングリフト機構)ならびにチャンバー容量切り換えインテークマニホールドシステムの採用により、低中速域から高回転域まで谷間のない出力特性と高レスポンスを実現した。 ◆高曲率大型ラウンド ガラスを採用することで、低く、短いコンパクト偏平ノーズと相まって、前方視界はもとより、後方視界も含めてミッドシップ・スポーツカーでトップクラスの視界を確保している。 ◆気流に沿って絞り込んだリヤ、長 く低いテールエンド、前進キャノピーデザインによるなだらかな傾きのリヤウインドウがすぐれた空力特性を実現。 ◆超音速ジェット機をイメージしたもので、キャビンをフロントに大きく前進させて レイアウトしたM・R方式ならではの前進キャノピー・デザイン。 ◆ヘッドライトはリトラブル式のプロジェクター4灯式を採用。点灯時の空力も考慮した薄型形状となっている。 ◆オールアルミボディも運動性だけでなく、安全性や経済性の向上のためにも寄与している。NSXのアルミは溶接性や成型性を考えて独自に開発されたものだという。 ◆乗員2人のストレスを極力排除し、最適なポジションと見やすさ/使いやすさを追求した機能最優先のインテリアは、スーパーカーとしては華やかさに欠けるという評論もあった。スポーツカーでありながら使いやすさを追求したAT仕様もラインナップ。 ◆ドライバーとパッセンジャーをインストルメントパネルに続く大型コンソールで分割し、最適空間を生み出す1by1のダブルサラウンドコクピット。
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