[懐かしの名車] ホンダNSX(初代):和製スーパーカーが世界に挑戦
1989年ホンダのF1チームは、全16戦中15勝という圧倒的な強さで、欧州の老舗メーカーを蹴散らしていた。そして今度は市販のミッドシップスーパースポーツで、フェラーリやポルシェに真っ向勝負を仕掛けたのである。しかもそれは従来のスーパーカー像とは一線を画すホンダ流。圧倒的な走りのパフォーマンスに加え、ABSなど当時の最新デバイスとゴルフバッグが2個入る実用的なトランクも備えていた、エポックな1台であった。 【画像】[懐かしの名車] ホンダNSX(初代)×16枚 【HONDA NSX 5MT(1990年)】●全長×全幅×全高:4430mm×1810mm×1170mm ●ホイールベース:2530mm ●車両重量:1350kg ●エンジン(C30A型):水冷V型6気筒DOHC2977cc ●最高出力:280ps/7300rpm ●最大トルク:30.0kg-m/5400rpm ●燃料タンク容量:70L ●10モード燃費:8.3km/L ●トランスミッション:5速MT ●最小回転半径:5.8m ●タイヤサイズ:前205/50ZR15 後225/50ZR16 ●乗車定員:2名 ◎価格:800万3000円
操縦安定性の研究者が提案したミッドシップは小型車のスタディだった
エンツォ・フェラーリ、フェルディナント・ポルシェ、フェルッツィオ・ランボルギーニなど、世界的なスーパースポーツカーには、夢と情熱でそれを生み出したエンジニアや企業家の名前が残されているものだ。しかし、日本において、開発者個人の名が広く知られるクルマはきわめて少ない。それは個人より組織を重んじる、日本の伝統的な企業風土にも関係しているのだろう。 もっとも、日本の自動車メーカーが世界を知り、海外においてはクルマの魅力の中に開発者の情熱や個性が含まれることをメーカー自身が認識するようになって、それは変わっていった。その転換点はバブル時代のこと。日本の自動車技術が世界レベルに到達し、国際的な評価を得るモデルが登場するようになると、海外メディアから開発者への取材依頼が目に見えて増えた。そうして、メーカーも開発者個人が発言することを許すようになったのだ。