北九州で整備が進む「水素・アンモニア拠点」でみた期待と不安 「3兆円補助金」で浮かび上がる燃料活用の現実と課題
基準価格は為替や燃料価格などの変動要因を除いて基本的に15年間一定でなければならない。水素やアンモニアを15年間利用する需要家をセットで申請する必要もある。また、補助期間の終了後10年間は供給を続けることが条件だ。 申請のハードルはそうとう高い。北九州のプロジェクトは補助金申請を視野に入れるが、「合計25年間の事業期間の中で需要家の紐づけがどこまであればプロジェクトが継続できるのか、まさに今見極めているところ」(関係者)だ。
国の補助金総額は3兆円。全国で8件程度の認定を目指すと国は表明している。とはいえ「予算規模を考えると、アンモニア案件を中心に3~4カ所に絞られるのではないか」(別の関係者)と言われている。 ■北海道、大阪、愛媛、山口でも動き 三井物産などが進める北海道苫小牧、大阪府堺・泉北地域などでの水素・アンモニア供給拠点整備プロジェクトも「有力候補」だ。北海道電力や三井化学などと共同で実現性調査を進めてきた。
三井物産はアンモニア輸入でトップシェア。アメリカの肥料会社大手CFインダストリーズ(CFI)と合弁でメキシコ湾岸に建設するプラントや、アラブ首長国連邦でアブダビ国営石油と建設するプラントから、「ブルーアンモニア」(製造過程で発生するCO2を地中に埋めて生産するアンモニア)を調達する。 北海道電力の苫東厚真石炭火力発電所でアンモニア混焼を行ったり、三井化学の大阪工場を中心に周辺の需要家に供給したりする計画だ。
三井物産クリーンアンモニア事業開発室の高谷達也室長は、「CCS(CO2の回収・貯留)に関してはアメリカの制度で補助を受けるため、価格競争力がある。世界最大規模でアンモニアを生産し操業のノウハウを蓄積しているCFIとパートナーを組んでいることも強み」と話す。 愛媛県今治市の波方ターミナルでも燃料アンモニアの供給拠点整備が進む。三菱商事が中心となって進めるプロジェクトで、同ターミナルには同社などで保有する4万5000トン規模のLPガスタンクが4基ある。これをアンモニア用に更新し、年間100万トンの燃料アンモニア供給基地にする。