北九州で整備が進む「水素・アンモニア拠点」でみた期待と不安 「3兆円補助金」で浮かび上がる燃料活用の現実と課題
「カーボンプライスなど将来いろんな規制やペナルティが出てくると想定して、先に国の制度に乗ったほうがいいと信じて需要家は価格差支援に手を挙げている。後続となる支援がなければ、需要家側の産業界は誰も積極的に脱炭素の取り組みをやらないだろう」。業界関係者はそう指摘する。 当然のことながら、ファーストムーバー(最初の行動者)向けとなる3兆円限りの価格差支援だけで水素・アンモニア需要は広がらない。 昨年12月に公表された第7次エネルギー基本計画の草稿では、長期脱炭素電源オークションにおける水素・アンモニア燃料費支援の「上限価格引き上げ検討」がかろうじて記されている。この制度は価格差支援に続く電力分野のセカンドムーバー以降に向けた支援拡充とされる。
が、「2030年までのアンモニア燃料需要300万トン」などとする政府目標を達成させるには、現行の補助制度では不十分だ。今後は電力分野だけでなく、ほかの産業分野でも需要家側の「第2弾」支援策の制度設計が早急に求められる。
森 創一郎 :東洋経済 記者