「水」の痕跡があった…! 「大気」が似ていた…! 今も地球からもっとも遠くを飛ぶボイジャーが、地球を沸かせた「衝撃的発見」
マスクメロンの縞模様のような「筋」が意味すること
月や火星をはじめ、太陽系の惑星・衛星の表面は、隕石の衝突に長いあいだ曝されて、クレーターだらけになっています。ところがエウロパの表面には、クレーターがほとんど見られず、その代わり、マスクメロンの縞模様のような「筋」が見えていたのです。これは、氷の表面がつねに更新されているからではないかと考えられました。 つまり、内部から水が噴き出している可能性があるということです。もしそうであれば、氷の下には液体の水が存在することになります。 その後、1995年に探査機「ガリレオ」が木星系に到達して、エウロパをさらに詳細に観測した結果、氷の下に「海」が存在する可能性がさらに高まりました。さらに2013年には、地球を周回するハッブル宇宙望遠鏡がエウロパを観測し、「筋」から水が噴き出しているさまをとらえました。 これらのことから、エウロパには氷に覆われた「海」が液体の状態で存在することがはっきりしたのです。木星ー太陽の距離は、地球ー太陽の距離の約5倍もあり、木星系は極寒の世界です。それにもかかわらずエウロパの内部の氷が融けているなら、そこに太陽からのエネルギー以外のなんらかのエネルギーが作用しているはずです。 その有力な候補とみられているのが、木星がエウロパに及ぼす「潮汐力」です。地球は月から潮汐力を受けており、そのために満潮・干潮が起こります。同様に、木星の潮汐力によってエウロパの氷と岩石に熱が生じ、氷が融けているのではないかと考えられるのです。 こうして液体の水があることがわかり、エウロパにも、氷の下には生命が存在するのでは、という議論が起こりました。それまで太陽系の生命探査は天体表面、つまり太陽のエネルギーが得られやすい環境に限定されていましたが、天体の内部も探査の対象となってきたのです。
暗黒の世界で紡がれる生命。鍵は「化学合成細菌」
そのことは、地球でも同様でした。地球では植物などの光合成生物が太陽光を利用して有機物を合成し、それを動物などの従属栄養生物が利用する、というしくみが唯一の生態系の形とみられてきました。 ところが1970年代末、ジャック・コーリスらは南米ガラパゴス諸島沖の海底を探索中に熱水噴出孔を見つけましたが*、その周辺ではハオリムシ(チューブワーム)などからなる特異な生態系が存在していました。 深度2500mという太陽光がまったく届かない暗黒の世界にも、地表とは別のしくみで生態系が維持されていたのです。 *『生命と非生命のあいだ』第4章、もしくは以前の記事〈まさに、かつての常識をひっくり返した…深海底からの「驚きの報告」〉参照 その鍵となるのが、化学合成細菌です。光合成細菌が光のエネルギーで有機物を合成するのに対し、化学合成細菌はメタンや硫化水素などの化合物が持つエネルギーを用いて有機物を合成しています。このことは、光の届かない氷の下でも、メタンなどのエネルギー源があれば、生態系が存在しうるということです。 こうして、液体の水やエネルギー(潮汐力など)が存在するエウロパの地下海は、新たに「ハビタブルな世界」として認識されるようになりました。 ボイジャー1号、2号は木星系を探査したあと、土星をめざして旅立ちました。1980年に1号、翌年に2号が相次いで土星系に到達し、土星のほか、その衛星たちも探査しました。 衛星たちの中でとりわけ注目されていたのが、タイタンです。
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