〈日銀利上げ〉変動金利を選んだ年収650万円の42歳会社員、マイホームを失う日までのカウントダウン…「実質賃金マイナスで打撃を受けているなか、詰みました」【FPが解説】
変動金利は本当に上昇するのか?
住宅ローンの変動金利は、各金融機関が定める「短期プライムレート」や「全銀協TIBOR」などをもとに決められています。短期プライムレートは無担保コール翌日物を参考にして決定されます。そのため、日本銀行の利上げには影響を受けるものの、すぐに変動金利の上昇に繋がる仕組みではありません。 実務としては各金融機関の経営上の都合によって、いつ変動金利を上げるかという判断がなされます。住宅ローンには「基準金利」と「適用金利」の2種類があります。基準金利から優遇幅を差し引いて適用金利が決定されます。住宅ローンを借りた消費者は、適用金利で計算された利息を支払っていくことになります。 たとえばauじぶん銀行の場合、基準金利は2.341%ですが、変動金利の新規借り入れの優遇幅はマイナス2.012%、適用金利は0.329%となります。2%もの乖離があるのです。 金融機関としては基準金利を上げざるをえない一方で、競争力を維持するために適用金利をなるべく低く抑えたいという思惑があります。既存客に対しても突然適用金利を上げてしまうと、顧客離れが起きてしまいます。また、今後の追加利上げによっては自己破産に至る顧客も少なくないはずです。 しばらくのあいだ、住宅ローン市場は金融機関同士の消耗戦が続いていくと思われます。しかしもともと住宅ローンは利ザヤが少ない商品であり、適用金利を0.733%まで引き上げた楽天銀行のように消耗戦からイチ抜けして健全化に舵をとった企業も出始めました。 金利競争の消耗戦も長くは続かず、遠くない将来に適用金利が上昇し、確実に家計に対する負担が重くなっていくと覚悟しておく必要があります。 「変動金利は今後も変動しない、低金利のままだ」と信じていた人が多いのではないでしょうか。しかし消費者としては、毎月の返済額が大幅に上昇し家計のバランスが変わってしまう局面に入って来たのは間違いありません。