東京で一度は食べておきたい独自の道をゆく「変化球カツ丼」の名店3選
●DATA かつ壱 住:東京都品川区上大崎2-25-5 久米ビル B1F
厚みの違う2種類のハーモニーを楽しむ「ワセカツ丼」
2016年、東京・早稲田の鶴巻町に誕生した『奏す庵』。現在は、日本橋に移転していますが、ここのソースカツ丼、一風変わっています。日本のカツ丼発祥当時のソースカツ丼をオマージュし、独自の工夫を凝らして作り上げた「ワセカツ丼」が味わえるのです。 カツ丼のルーツは大正時代。早稲田鶴巻町にあった洋食屋『ヨーロッパ軒』のシェフが、ドイツ修業を終えて帰国後、「シュニッツェル」(カツレツ)をヒントにカツ丼を作ったのが始まりと言われています。今のような卵でとじたものではなく、シュニッツェル同様に極薄なタイプ。そしてソース味。 その洋食屋さんは関東大震災をきっかけに福井県に移転し、ソースカツ丼として定着。つまり、実は日本のカツ丼のルーツは福井にあるわけで、その“早稲田生まれ・福井育ち”の「かつ丼」を、再び発祥の地・早稲田で復活させたのが『奏す庵』の「ワセカツ丼」というわけなのです。
「ワセカツ丼」は、揚げたてのカツがご飯を覆い隠すように積み上げられています。その数5枚。内訳は、薄いカツの中でも極薄の「うす」3枚と、ちょい厚めの「あつ」が2枚。どれも特製のソースに浸されて、しっとりしています。
「うす」はびっくりするほど薄いです。まさにシュニッツェルのよう。目測で4~5mm程度。極めて細かなパン粉の衣をまとっています。 「あつ」のほうは1cm弱。こちらも同様の繊細なパン衣ですが、「うす」よりはややどっしりとした貫禄を感じます。
この「うす」と「あつ」、たった数ミリの違いなのに、食感も味わいもまったく異なっているのが不思議。どちらも衣とお肉がピタッと一体化しています。だからフルーティなウスターソースがまんべんなく染みていて、どこから食べても美味しいのです。 さらに、丼の下のご飯の表面にはその極上のソースダレが適度に染みており、お米だけでも極ウマ! 「ワセカツ丼」を食べ終わっても胃もたれ感はなし。意外とあっさりしていて、だからまたすぐに食べたくなってしまう。そんなカツ丼です。