「もっと早くがんを見つけていればよかったんですよね。悔やんでも悔やみきれません」…検診を受けていたら結果は変わった?
「もっと早く病院に行っていれば」
検診以外でがんと診断される患者さんの多くは、症状が出現したのをきっかけに、病院を受診しているのですが、「症状が出始めたタイミングで、もっと早く病院を受診しておけばよかったのでは」と悩む方もいます。 「振り返れば、1年くらい前から、おなかの調子が悪かったけど、あのときに検査を受けていれば、まだ早期だったのではないか」 「近くで見ていて、なんとなく元気がないと思っていたけど、もっと早く病院に行くように言えばよかった」 という声はよく聞きます。 そのときには、病院に行こうとは思わなかった程度の症状だったわけですし、それががんの症状だったかどうかもわかりません。病院に行っても診断には至らなかったかもしれませんし、診断されていたとしても同じ経過だったかもしれません。やはり、「ああしておけばよかった」という推測は当てはまらないことも多く、真実は誰にもわかりません。 人間というもの、普通に生きていれば、「ああしておけばよかった」という後悔をするのはよくあることです。「進行がんにかかる」という重大な出来事についても、そのような後悔をしてしまうのは、自然なことかもしれません。 でも、「自分の不注意でケガをしてしまった」というのとは違って、がんという病気は、原因がはっきりしないことがほとんどです。検診を受けていなかったからがんになったわけでもなく、自分の不注意ががんを引き起こしたわけでもありません。 あれやこれや思い悩むことで、事態が好転するのなら、思い悩む意味があるかもしれませんが、進行がんと向き合っているという事実が変わるわけではありませんので、あまり考えすぎない、というのも大事なことです。 がん研有明病院腫瘍精神科の清水研さんは、思い悩む患者さんに対して、このようにアドバイスしています。 「自分の努力で変えられないことは、考えすぎずに、そのまま受け止めましょう。くよくよ考えてしまうのはよくあることですが、それは、受け止めるために必要なプロセスで、いずれ受け止められるようになるでしょう」 進行がんというのは、すぐには受け止めきれない重い事実ですが、ひとしきり思い悩んだあとは、視点を過去から今へと移し、今できることを考え、取り組んでいくのがよいのだと思います。