「ターク」で日本の美に触れ、「グッチ」で緊張の司会、優秀な高校生と出会う【向千鶴サステナDが行く】
サバトの「グッチ」を着てトム・フォードからの系譜を体感
展覧会「Gucci Cosmos」のプレスカンファレンス(9/30)
「グッチ」と京都市の共催による展覧会「Gucci Cosmos」のプレスカンファレンスでモデレーターの大役をもらい、イタリアのファッション研究家であり評論家のマリア・ルイーザ・フリーザさんたちと話しました。マリア・ルイーザのキュレーションの特徴は雑誌的。説明的ではないのに会場を歩くうちに「グッチ」というブランドが大切にしていること、ひいてはイタリアやデザインそのものの奥深さに気づかされます。
「グッチ」の取材はいつも濃厚です。2004年に初のミラノコレ取材でトム・フォード引退の「グッチ」に立ち会うという衝撃的で超絶ラッキーな経験をし、東日本大震災後にはフリーダ・ジャンニーニ(Frida Giannini)と東北を訪れ、アレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)のデビューコレクションでは新しい時代の扉が開く音を聞きました。それらの記憶を携えつつ、サバトによる最新コレクションを着ながら展示場を歩くと過去20年の流れが体の中に流れ込むようです。
何より、トム・フォード(Tom Ford)時代の「グッチ」のルックの横に並ぶサバト・デ・サルノ(Sabato De Sarno)による最新ルックを見て、はっきりとした系譜と進化が見て取れたのが自分の中でも大きな収穫でした。そしてトム以前、1970年代のアーカイブが全デザイナーに影響を与えたことも明らか。突然変異のように見えたけど、アレッサンドロ・ミケーレの仕事もそれらの上に成立していたことが理解できてクリエイティブ・ディレクターの仕事って面白いな、と改めて思ったのでした。
壇上の話で特に面白かったのは、ブランド誕生物語です。1800年代後半に若き創業者グッチ・オ・グッチがロンドンのホテル、ザ・サヴォイでポーターとして働いたとき、そこで見た英国の旅行者たちのスタイルからインスパイアされたそう。クリエイティブ・ディレクターたちの登場よりずっと前から「社会を観察して製品に反映する」姿勢があったということです。だから展示されているものは言葉を持たないオブジェだけれど、雄弁に時代の美意識、人々の“欲望”を浮かび上がらせるのでしょう。