個人資産800億円、伝説のサラリーマン投資家が「過去最悪の下げ相場で230億円の買い」を決断できた理由
■個人投資家が特に注意するべきこととは ただ最も大切なことは、詐欺にあわないことです。詐欺にあうと、投資した財産はゼロになります。その詐欺のなかで圧倒的に多いのが「未公開株詐欺」。事件化するケースはあまりありませんが、水面下では膨大な数の未公開株詐欺が行われているはず。私自身、未公開株詐欺に引っかかりそうになったことが何回かあります。特に株式投資で成功された個人投資家は気をつけましょう。その成功が知れ渡ると、実体のない未公開株をぶら下げた詐欺師たちが、ほぼ確実に近寄ってきます。 それと詐欺ではありませんが、やはり気をつけなくてはならないのが、様々な金融商品の手数料です。特に要注意なのが「仕組債」で、そもそもいくら手数料が抜かれているのか、個人投資家にはわかりにくいように設計されています。現在、仕組債は合法的な金融商品で、一律に規制するのは難しいのが現状。せめて仕組債を販売する際の顧客とのやり取りの録画を金融機関に義務付け、後でトラブルが発生した際に確認できるようにすれば、投資の素人に対する強引な販売を少しでも牽制できるのではないかと思います。 また、「ラップ口座(ファンドラップ)」も良心的だとは言えません。全体の手数料が不明か、少なくてもわかりにくい説明になっています。私も様々な資料に目を通してみたものの、結局のところよくわかりませんでした。確かなのは手数料が二重取りされていることです。なかには三重取りが疑われるファンドラップがありました。とはいえ、いずれも“対面証券会社”のファンドラップの話であり、最近では手数料が安くて透明性の高いネット証券のファンドラップが誕生し始めています。 ビジネスパーソンの方には、投資で身を立てようとはせず、生業の稼ぎで生まれた余裕資金を長期投資に振り向け、そのまま仕事を続けることをお勧めします。割安で高い成長性を秘めた投資先の株価があまり上がらなくても、持ち続けることで大きなリターンを得られる可能性を高められるからです。 それと、仕事にやりがいを感じ、職場での人間関係が良好であれば、「誰かの役に立っている」という実感を得られているはず。人にとってお金以上に大切なのは、誰かの役に立つことでもたらされる幸福感ではないでしょうか。自分の投資人生を振り返り、その重要性を私は改めて感じています。 ※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年10月18日号)の一部を再編集したものです。 ---------- 清原 達郎(きよはら・たつろう) 投資家 1981年、東京大学を卒業し、野村證券入社。ゴールドマン・サックス証券などを経て、98年、タワー投資顧問で「タワーK1ファンド」をローンチ。2005年の高額納税者名簿で全国トップに。23年にファンドの運用を終了し、退社。著書に『わが投資術 市場は誰に微笑むか』(講談社)。 ----------
投資家 清原 達郎 構成=伊藤博之