日本一わずかに1回、阪神は日本シリーズに勝てる?
ソフトバンクのリリーフに呉昇桓ほどの圧倒的な存在はいない。五十嵐は第5戦で中田に同点弾を浴び、その試合ではサファテも2イニング目に力尽きた。しかしそれでも手駒は阪神を上回っている。2013年の日本シリーズで大活躍した森福、経験豊富な岡島、ロングリリーフも可能な岩崎などバリエーションが豊富な点が強みだ。レギュラーシーズン終盤は森、五十嵐、サファテと型にはめた継投で勝ってきたが、その3人が好調とはいいがたい状態だけに手駒を生かした臨機応変な継投が勝利へのカギとなる。
■野手 阪神・西岡、ソフトバンク・細川&鶴岡、日本一経験者に注目
2005年以来の日本シリーズ出場となる阪神、2011年以来のソフトバンク、野手の経験値ではソフトバンクに分がある(表5)。2011年の日本一時に主力だったのは内川、松田、長谷川、そして細川だ。細川は西武時代の2004、2008年にも日本シリーズに出場し、いずれも日本一となっている。さらに今シーズン日本ハムから獲得した鶴岡も2006、2007、2009、2012年と4度出場、2007年には日本一になっている。2004年以降11度の日本シリーズで7度も出場している2人の経験は何物にも代えがたい。この点はシリーズ経験者の少ない阪神に対しての大きなアドバンテージとなる。
一方の阪神は選手の入れ替えが進んだこともあり2005年の経験者は少なく、レギュラーだったのは鳥谷ただ1人。そんな中で頼りにしたいのが他チームでの日本シリーズ経験者だ。その筆頭がロッテを2度の日本一に導いた西岡。2005年は阪神の対戦相手として出場し圧勝、2010年は今回の阪神と同様にファイナルステージでアドバンテージを跳ね返して日本シリーズにたどり着き、日本一となった。クライマックスシリーズで西岡が復帰したあとチームは勢いに乗った。その存在感で自身3度目のシリーズ制覇を目指す。そしてもう1人の重要人物が鶴岡だ。実は彼も日本シリーズの経験者。巨人時代の2008年のシリーズでケガのためマスクをかぶれなかった阿部に代わって全7試合でスタメン出場している。結果として西武に敗れたものの、その経験は非常に貴重だ。DeNAに移籍した久保の人的補償として阪神が獲得した当時は疑問の声も少なくなかったが、ファイナルステージでは好リードで巨人打線も封じこめた。その評価はうなぎ上りで、もはや欠かせない選手となっている。シリーズでも正捕手として強力打線を抑え込めるか。
勢いに乗る阪神が優位だが‥
ここまで3つのポイントでシリーズの行方を考察してきたが、10月以降の勢い、先発投手の充実といった点からみても阪神が若干優位な状況は間違いない。しかし勢いに乗るチームは一度負けた時が問題。とくに今の阪神は呉昇桓という絶対的存在を全面的に生かしたチームとなっているだけに、その柱が崩れた場合の立て直しは容易ではない。ソフトバンクとしては呉昇桓攻略が勝利への近道、仮に初戦からそのミッションをクリアするようなことがあれば一気に形勢は逆転するだろう。このシリーズ最大の見どころは呉昇桓の最初の登板の結果といっても過言ではない。 (株)日刊編集センター