気付くまで15年「妻からDVを受けていた」。エスカレートする支配と暴力、絶望の日々 世間体で相談しづらい男性たちのSOS「ベッド脇にムカデの塊」「みそ汁に下剤」―
徳島県内に住む会社員の斉藤大介さん(仮名、50代)は20年以上前、当時20代だった女性と結婚した。 【写真】4歳から性的虐待を繰り返す義父との、地獄の10年間 「何をされても石のように固まっていました」 両親の性行為も日常的に…
相手は交際期間中も斉藤さんを束縛しようとするなど攻撃的だった。結婚後はさらにエスカレートし、斉藤さんは無視され、給料を管理され始めた。やがて子どもにも危害が及ぶように。心身共に疲弊しきった日々の末、紹介された相談窓口にたどり着いて初めて気付いた。「自分はドメスティックバイオレンス(DV)を受けていた」 DVは男性が加害者、女性が被害者という先入観を持たれがちだが、全国的に年々、男性からの相談件数は増えている。斉藤さんに絶望の中で過ごした15年間の話を聞くと、男性も自覚がないまま被害者になり得る実態が浮き彫りになった。(共同通信=別宮裕智) ※記者が音声でも解説しています。「共同通信Podcast」でお聴きください。 ▽交際中から兆し 斉藤さんは結婚するまで約3年間、相手の女性と交際した。その時から、予兆はあった。 週末に仕事で家を空けると、2人で過ごすことを優先させるよう求められ、罪悪感を抱かせるような内容のメールを送りつけてきた。一緒に過ごした後に家に帰ろうとすると、車内で寝たふりをされ、日付をまたいでも帰してもらえなかった。
徳島市でDVの被害者支援に取り組む一般社団法人「白鳥の森」山口凜(やまぐち・りん)理事は、相手の行動をこう分析する。「パートナーの世界を自分だけにしたいのだろう。支配下に置こうとしている」「パートナーの両親や友人との関係を断絶することで、社会から孤立させ洗脳するという手法は(DV加害者の)常とう手段だ」 結婚し同居が始まって約1カ月後、相手に異変が起きた。部屋に引きこもり、家事をしなくなったのだ。斉藤さんは無視される期間が1~2週間続いた。 その後も度々家事を放棄しては、機嫌を直をするということを繰り返すようになっていった。無視される期間も延びていき、半年~1年に及ぶこともあった。 ▽子どもも標的 斉藤さんはどうしていいか分からず悩んでいた。そんな折に一人目の子どもが生まれ、3年後には二人目にも恵まれた。 下の子は特に斉藤さんになついた。するとそちらに矛先が向かった。斉藤さんに抱きつくとすぐに引き離され、おもちゃを投げつけられて顔を縫う大けがを負ったこともあった。少しずれていたら失明の危険もあった。