気付くまで15年「妻からDVを受けていた」。エスカレートする支配と暴力、絶望の日々 世間体で相談しづらい男性たちのSOS「ベッド脇にムカデの塊」「みそ汁に下剤」―
しかし半数に当たる10人が、被害について誰にも相談しなかったという。その背景としては「相談できる場所を知らなかった」「DVの自覚がなかった」といった理由が並んだ。 さらに、20人全員が「男性がDV被害について相談しにくい現状があると感じる」と回答。具体的な理由には「世間の目が気になる」「恥ずかしい」といったもののほか、「DVは女性だけが被害に遭う問題だとずっと思っていた」「男性がDV被害に遭うなんて理解されないと思う」といった声があり、被害者の男性自身が先入観にとらわれている様子が浮かび上がった。 野口登志子(のぐち・としこ)代表理事は、「加害者は暴力を振るいながらも、こういうことをさせるような原因を作ったのは相手だ、と被害者意識を持っていることが多い。男性側は周囲に相談しても我慢しろと言われてしまいがちで、被害が重篤化する」と話す。 また、相談に訪れる被害者は「自分も悪いところがあるのですが」と説明する傾向があるといい、野口さんは「加害者と被害者が逆転してしまっている」と解説する。 ▽男性のための自助グループ
警察庁によると、2023年に全国の警察に寄せられたDV被害相談のうち、男性からは2万6175件と過去最多で全体の29・5%を占めた。2014年は5971件で、10年間で4倍以上に急増している。 白鳥の森は、7月下旬、男性のDV被害者の自助グループを立ち上げ、初めての会合を開いた。団体によると、男性の被害者に限定した自助グループも全国的にも珍しいという。 自治体などの相談窓口では、名称に「女性」や「子ども」と冠していることで男性が相談しづらい傾向がある。会合では当事者の経験を共有するだけでなく、男性が助けを求めやすい環境づくりなどについて意見交換した。 野口代表理事はこう力を込める。「現在も苦しんでいる人のために、どのように啓発していけば声が届くか考えたい。DV被害者支援に男女差別があってはならない」 * * * DV被害の相談先として、都道府県や市区町村は「配偶者暴力相談支援センター」といった名称の支援機関を置いており、全国共通短縮ダイヤル「#8008」にかけると、電話を発信した都道府県のセンターにつながる。
また、内閣府が開設している「DV相談プラス」では、24時間受付の電話0120(279)889や、正午~午後10時のチャットなどで専門の相談員が対応している。