「日本の多様性を守りたい」 地域に根付く文化をつなぐ「石徹白洋品店」
販路は石徹白の本店と自社ECに加えて、長野県東御市のわざわざや東京・神楽坂のてならい堂などの卸先やポップアップストアによる委託販売を行う。「自社ECの売り上げが伸びている。これまでは服作りのストーリーに共感いただいた方や自然志向の方の購入が多かったが、着やすさや使いやすさを評価いただきリピートしてくださる方が増えている」と手ごたえを語る。直線裁ちのため体に沿うようなラインは生まれ辛いが、機能性や着やすさが支持されている。「洋服は人の体を美しく見せるためのカッティングだけど、“たつけ”は日本の自然の恵みを使って作られた貴重な布で作られた、いわば自然中心の服。着る人によって余白が生まれる働くための服。直線断ちの服は日本の先人の知恵でありそれを伝えることが重要だと考えている」。
日本には土地に根付く文化が失われつつある地域が多い。「石徹白のような集落は全国にたくさんある。淘汰されてなくなるところもあるだろうが、日本のすばらしさは農山村や漁村にあると思う。先人のアイデンティティがあり、そこから人が都市に出て都市が形成されたまたま今は膨れ上がっている。日本の多様性をなくしていいのか。それぞれの地域が土地の特徴を形にすることで、知ってもらうきっかけになり、それを住む人々が誇りに思い、文化を醸成され、人が残ったり新しく来たりすれば。日本全体の多様性の保全に私たちの実践がヒントになればうれしい」。