なぜラミレス監督は代打安打&激走のドラ1森敬斗を「何かスペシャルなものを持っている選手」と絶賛したのか
18歳のバットには、もうひとつの思いがあった。 6回に一死満塁の絶体絶命のピンチがあった。打席には本塁打王争いで2位タイに並ぶ同点の26号を2回に放っている丸。「始めから3人を用意していた。プラン通り」というラミレス監督は、ここから1失点の好投、平良から一人一殺の決死の継投策を繰り出す。丸には、左腕の砂田。フルカウントから投じたスクリューボールでバットに空を切らせた。続く中島には右腕の平田。平田も、またフルカウントからスライダーを内角のストライクゾーンに落とすと、中島は反応できなかった。7回には、4番手の石田が3者凡退。1点を守る投手陣の思いが森の使命感に変わっていた。 「中継ぎの好投? はい。点差も1点差。僅差だったので、ここで、得点したら大きいかなと思っていた。先頭で出てやるという気で打席に立ちました」 森が輝いたのはこれだけではなかった。続けて足で魅せる。 ラミレス監督は2回に勝ち越しのタイムリーを放っている戸柱にバントさせ、“首位打者“の梶谷の前に森を得点圏に送った。梶谷の一打は、一、二塁間をゴロで抜ける。ライトの松原が猛チャージ。だが、森は速かった。迷うことなく三塁をベースを蹴るとホームへ左手を伸ばしてのスライディング。ボールは返ってきたが、クロスプレーにもならず炭谷はタッチもできなかった。 リードを2点に広げる貴重な3点目だ。 しかし、試合後、森の口から出たのは反省の弁。 「あれでギリギリになっているようではダメだとコーチと話をしました。ライナーでもなく、バウンドしたヒット。しかも右方向。もっと(早くスタートを切る)判断が出来て還ってこれれば良かったと思いました」 50メートルを5秒8で走る。 桐蔭学園高時代に選ばれたU-18代表では、その足とシャープなバッティングを買われ、全試合「1番・センター」で起用された。4番には石川昂弥(中日)、投手陣には佐々木朗希(ロッテ)、奥川恭伸(ヤクルト)、西純矢(阪神)らの錚々たるメンバーが揃った“高校ジャパン”である。二遊間の強化が課題の横浜DeNAは、その2019年のドラフトで、「走攻守3拍子揃っているナンバーワンの野手」という評価を与えた森を単独1位指名して、ドラフト会場をどよめかせ、将来への期待を込め背番号「6」を与えた。 その走攻守のうち「走攻」の非凡さを見せつけたのである。 この回、森が火をつけて、一気に3点を追加。巨人の優勝に「待った」をかけた。 ラミレス監督もスーパールーキーを「何かスペシャルなものを持っている選手だ」と絶賛。ラミレス監督は、まずは、その打撃技術をこう解説した。