「薬よりもはるかに効くんです」愛知県の山間部の病院に、高齢者が自ら育てた野菜を置いていく深いワケ
経済成長を追い求めて走り続けてきた、戦後から今日までの80年。その結果としてモノは豊かな社会になったけれど、お金でしか価値をはかれない社会になってしまった。渋沢栄一のひ孫である渋沢寿一は、里山の暮らし方を研究する中で、多くの地方移住者と対話を重ねてきた。その中で見い出した、持続可能で幸せな社会を実現するためのヒントとは。※本稿は、渋沢寿一『森と算盤 地球と資本主義の未来地図』(大和書房)の一部を抜粋・編集したものです。 【この記事の画像を見る】 ● 自分らしく生きるための基準点は 「何をするか」よりも「どうあるべきか」 移住したみなさんに共通するのは、自分たちの生き方を、自分たちで模索し、見つけていったということです。平たく言えば、自分の人生を自分で決めるということですが、実際に移住した先にあるのはテレビで紹介されているような「楽園」というわけではありません。濃密な人間関係や、場所によっては過酷な自然環境など、都会の暮らしでは出会うことのない煩わしさにも直面します。実際に、その煩わしさに耐えかねて、もとの都会に戻る人もいます。 しかし、「煩わしい」つながりの中で生きることは、必ずしも個人の在り方が抑圧される、ということではありません。現に彼らは、自分らしく生きることを追い求めた結果いまの場所にたどり着き、その地域で暮らし続けています。彼らは必ずしも、もともと環境意識が高かったというわけでもありません。自分の生き方や人生における大切な仕事とは何かを探す中で、新しい暮らしにたどり着いたのです。 彼らが生き方の主軸に置いているのは、Do(何をするか)ではなく、Be(どうあるべきか)ではないかと思います。
どのような職業につき、どれほどの収入を得て、何をするのかといった評価軸ではなく、何を大切にして生きたいか、どういう風に自分らしく生きるか、ということを人生の軸に据える考え方です。 例えば「どれぐらいお金を稼ぎたいか」といったDoに基づいた考え方であれば、どう成果を上げるか、どこに転職するか、といった短期的かつ自分中心的な思考になりがちです。しかし、「自分は人生を通してどうありたいか」というようなBeの考え方では、家族や周りの人、自分まで命をつないでくれた先祖たちなど、長期的かつ、自分を形成する人間関係までふくめて目が向くようになります。 ● 自分の役割を実感できることが 持続可能な生き方につながる 私は全国で地域づくりに携わっていますが、地方を回っていると、幸せな社会とはいったい何だろうかといつも考えさせられます。 首長さんの中にはまだまだ、外から人を集めてお金を儲けることが地域活性化だと思っている方も多いと感じます。しかし、そのような経済を中心とする世界がそう長くは続かないことは、わかっていただけると思います。