再戦勝てる?!村田諒太のWBA王座奪回計画を敵陣営が警戒
7月12日に大阪のエディオンアリーナでWBA世界ミドル級タイトルのリマッチに挑むリ元王者の村田諒太(33、帝拳)が3日、都内の帝拳ジムでスパーリングを公開した。帝拳サイドが招待して王者のロブ・ブラント(28、アメリカ)陣営のトレーナーが偵察にきたが、「パワーが増している」と要警戒。村田は多彩なアクションを加え、ワンツー一辺倒のパターンを脱却、コンビネーションブローでロープへ追い詰めるブラント対策のボクシングを完成させていた。前回の完敗を受けて村田不利の戦前予想が少なくないが、サウル“カネロ”アルバレス(メキシコ)を頂点に世界で最も熱い階級であるミドル級王座の2度戴冠という偉業達成の可能性が見えてきた。日本のボクシング界ではベルトを失った元王者のリマッチでの奪回は、輪島功一氏(2度)、徳山昌守氏に次ぎ3人目の快挙となる。
2次元から3次元ボクシングへの変化
変わらなければやられるーー。リマッチの鉄則を村田が、敗戦から8か月、実直に実行してきたのがよくわかった。スーパーミドル級のアイザイア・スティーン(22、米国)を相手に2ラウンドの公開スパー。来日時には、90キロありながらスピードのある若手のホープを“新スタイル”の村田が圧倒した。 明らかな変化は、攻撃の際の多彩なアクションだ。プレスをかけながらフェイントを使い、上半身を柔軟に揺らし、ガードも動かし、パンチの出所を変えて攻守が一体化していた。武器である右ストレートを確実にヒットさせるだけでなく、2ラウンド目には、右フックから左ボディ、右のボディから右フック、アッパーからワンツーなど、幾種類ものコンビネーションブローを繰り出して“仮想ブラント”に何度もロープを背負わせた。ベルトを失った試合では一度も作ることのできなかったシーンである。 「前はワンツーだけ。あれじゃ詰まらない。上下、横から攻めると自然にそうなる」 ワンツー一辺倒のスタイルから脱却。2次元のボクシングから3次元へのボクシングへの変換である。元3階級王者、ホルヘ・リナレスの実弟であるカルロス・リナレス・トレーナーとのコンビで、リングを大きく使い、上下の多彩なミット打ちを重ね磨いてきた新スタイル。それを実戦で表現できるようになってきた。そして、なにより鉄壁のガードを崩し、少々被弾してでも強引に打ちに行くという気構えが見えた。 「無理してでも前に出る。逃げ回られてポイントを取られていくしかないというときはいく」 減量期に入り、試合10日前で疲れもピーク。その時期にこれだけ動けば十分だろう。ここまで総スパー数は約130ラウンド。「迷いなく練習ができていた」の証だ。 村田自身も「手ごたえはある」と言うが、「では、変わったかどうかは、7月12日の結果で評価されるもの」と、しっかりと足元を見ていた。 本田明彦会長の招待でブラント陣営を代表して視察にきたネイサン・ピピトーン・アシスタントトレーナーも素直に村田の変化に警戒を強めた。 「前回よりもパワーが増したような印象がある。いくつかテクニックも変わっていた。どちらかといえば、本来、彼が持っているいいもののレベルが上がったように見えた。過去の試合、映像を見て村田の持っている力は見てきたつもりでいたが、前回のブラント戦で見せていなかった部分もあった。彼はいい準備ができているようだ」