7つの激戦州だけじゃない! トランプvsハリス「歴史的な接戦」で重要な意味を持つことになる州とは?【前嶋和弘の2024アメリカ大統領選、深層ウォッチ】
では、史上まれに見る接戦では、具体的にどのようなことが起こり得るのか? ここで、すでにお気づきの方もいるかもしれませんが、全米で選ばれる選挙人の総数は「538人」ですから「269人対269人」で、きれいに割り切れて決着がつかない可能性があるのです。予想外の波乱が起きなければの話ですが、激戦州以外の州で両者が確実に獲得するとみられる選挙人の数は、ハリスが225人、トランプが219人です。そこに激戦州を積み重ねていくと、4つほど現実的に「両者同数」が起こり得るパターンがあります。 そのうちのひとつが、7つの激戦州のうち、ハリスがウィスコンシン、ペンシルバニア、ミシガンで勝利し、トランプがアリゾナ、ジョージア、ネバダ、ノースカロライナで勝利し、激戦州を3対4で分け合うと、最終的に269対269の同数になるというシナリオです。 ただ、ここで極めて重要な意味を持つことになるのがネブラスカ州です。選挙人の定員は5人で基本的には共和党優位の州なのですが、ネブラスカ州は「勝者総取り」ではなく、都市部の「オマハ選挙区」だけはハリスが勝つ可能性が残されています。先ほどのパターンではトランプが勝利することを仮定していますが、もしここでハリスが勝利して、ネブラスカ州の選挙人5人のうち、ひとりを確保すると270対268でハリスが大統領選で勝利することになります。 そのため、トランプ陣営は選挙戦が始まってから「ネブラスカ州も勝者総取り方式に変更すべきだ」と訴えました。そうすれば、共和党優位のネブラスカでは確実に「選挙人5人」を確保できるからです。もちろん、選挙戦の途中でルールを変更するという要求は受け入れられませんでしたが、歴史的な接戦が予想される今回の選挙戦で、両陣営がいかに「選挙人ひとり」の奪い合いに必死なのかが、おわかりいただけると思います。 では、それでも11月5日の投票の結果、選挙人の数が269対269の「引き分け」になった場合はどうなるのか? また、仮にトランプが負けた場合、トランプ陣営や、その支持者たちがどのような動きに出る可能性があるのか? 次回は、11月5日の投票日の先に待ち受けるかもしれない「別のシナリオ」についても考えてみたいと思います。(続く) インタビュー・構成/川喜田 研 イラスト/PIXTA