【音楽で味が変わる!?】 食事は「音環境」にも注意! 音と味覚の関係について医師が解説
飛行機の機内食の味と音の関係
飛行機内では気圧や湿度の影響等で味覚が鈍化する傾向にあると言われますが、機内の「音」も関係することが分かってきました。 2010年に英国にあるマンチェスター大学のアンディ・ウッズ博士らのグループが報告した研究では、飛行機の中で絶えず耳につくエンジン音「ホワイトノイズ」の味覚に対する影響を調べました。 この研究では48人を対象に、「ホワイトノイズ」を聴いた状態でお菓子などを食べたところ、音が大きくなるに従い、甘味と塩味が感じにくくなりました。 このような研究報告などを受け、機内食は塩やスパイスを多めに加えて味を強調する工夫がされるようになったほか、英国の航空会社ブリティッシュ・エアウェイズ等は機内食を美味しく感じさせるための音楽のプレイリストを作り、実際に活用しています。
子どもの食事では音環境にも心配りを
このような音と味覚の密接な関わりから、食事中に音楽を聴くと味を正しく認識しない可能性が高いことが分かります。 特に、味覚が敏感な子どもの時期に正しい味覚を身に付けることが大切ですが、味覚の発達ピークは3~4歳頃とされ、10歳頃までの味の記憶がその後の味覚の基礎になるとも言われます。ですから、食事の際の周りの音環境は常に意識したいものです。 しかし、音楽に対する反応は子どもの性格や好みにもよるため、どんな曲が子どもの食事に好ましいかは難しい面があります。 ただ、特に音の影響を受けやすい甘味は虫歯との関連が懸念されますし、味覚の成長・発達への影響も考えるならば、特に音楽などはかけずに日常の自然音の中で食事をするのがいいでしょう。 そうは言っても、毎日音無しでおとなしく食事するのは、やはり味気ないもの。時には雰囲気のある音楽の流れる場所で、楽しく料理に舌鼓を打つのもいいものです。 以上より、音楽をうまく活用しながら、美味しく食事を食べるようにしたいですね。 【記事執筆】 島谷浩幸 歯科医師(歯学博士)・野菜ソムリエ。TV出演『所さんの目がテン!』(日本テレビ)等のほか、多くの健康本や雑誌記事・連載を執筆。二児の父でもある。ブログ「由流里舎農園」は日本野菜ソムリエ協会公認。 参考資料: ・Charles Spence et al: The role of auditory cues in modulating the perceived crispness and staleness of potato chips. Journal of Sensory Studies19(5); 347-363, 2005. ・チャールズ・スペンス著,長谷川圭訳:「おいしさ」の錯覚 最新科学でわかった、美味の真実.角川書店,2018. ・Charles Spence et al: Looking for crossmodal correspondences between classical music and fine wine. Flavour2; 1-13, 2013. ・教育機器編集委員会編:産業教育機器システム便覧.日科技連出版社,1972. ・「Kitchen Theory」および「The Fat Duck」関連サイト等,2024. ・Kantono et al: Emotional and electrophysiological measures correlate to flavour perception in the presence of music. Physiology & behavior199; 154-164, 2019. ・草野寿之ほか:聴覚刺激が味覚機能に及ぼす影響-甘味と塩味についてー.顎機能誌19;145-156,2013. ・AT Woods et al: Effect of background noise on food perception.Food Quality and Preference22; 42-47, 2011.
執筆/島谷浩幸(歯科医・歯学博士・野菜ソムリエ)