【音楽で味が変わる!?】 食事は「音環境」にも注意! 音と味覚の関係について医師が解説
ビジネスに活用される食のクロスモーダル
英国のレストラン「キッチン・セオリー」では、インスタグラムのアカウントで「我々は料理を作るだけでなく、体験を作る(筆者訳)」というコンセプトの記載があるように、提供されるコースはバリエーション豊かな音や音楽、照明などの演出により料理の味覚がどう影響するのかを体験させてくれます。 実際に客がヘッドホンを装着して料理を食す場面が、同レストランの公式YouTubeで垣間見ることができます。 また、同じく英国にあるレストラン「ザ・ファット・ダック」では、魚介類が豊富な看板メニュー「Sound of the Sea」を、貝殻に仕組まれたiPodのイヤホンから波の音などを聴きながら食べることができます(これもYouTubeに関連動画あり)。 つまり、レストランにあるさまざまな仕掛けで料理の味わいが操作されていると言っても過言ではないのです。 そのような観点から、レストランや飲食店で流れるBGMに耳を傾けてみても面白いかもしれませんね。
音楽は甘味に影響する?
甘味は心理的要因の影響を受けやすい味覚とされるため、関連研究を紹介しましょう。 2019年にKantono氏らが報告した研究では、チョコレートのジェラートを食べながら好きな曲を聴くと甘味やミルキーさが関連性を示し、嫌いな曲の場合は苦みやクリーミーさが関連することが分かりました。 一方、2013年に明海大学歯学部のグループが報告した研究では、純音または音楽による聴覚と味覚(甘味・塩味)の関係について調べました。 この研究では健常有歯顎者22名を対象に、純音(10ヘルツ、4000ヘルツ、20000ヘルツ)と癒し系などの音楽(モーツァルト2種類、自然音が収録された1種類)を聴いて味覚の感受性にどう影響するかを解析しました。 その結果、純音による聴覚刺激では味覚への影響は認められませんでしたが、自然音による聴覚刺激では特に甘味の感受性に影響し、甘味が低下することが明らかになりました。 自然音のCDには、小川のせせらぎ、虫の鳴き声、風の音、波の音などが収録されていましたが、自然音は1/fゆらぎをもったリフレインを基調とし、人間にとって心地よさとなって伝わります。このCDによるリラックス効果で覚醒レベルがやや低下したため、感受性が鈍ったと推察されました。 また、音楽の嗜好による影響については、モーツァルトを「好き」と回答した被験者の音楽効果度は「嫌い」と回答した被験者と比べて有意に大きい値を示しました。つまり、好きな音楽を聴くことにより甘味を感じやすくなることが判明したのです。