<一冊一会>秋の夜長にじっくり読みたい「サイエンス」本、知識の探求が導くさまざまな幸福の形
うだるような暑さも終わり、やっと夜空も澄んできたように思います。 秋の夜長に、「サイエンス」本を読んでみるのはいかがでしょうか? 【画像】<一冊一会>秋の夜長にじっくり読みたい「サイエンス」本、知識の探求が導くさまざまな幸福の形
人類の知識の探究
昨年の8月の東京は、31日連続で30度以上の「真夏日」が続いたそうだ。しかし、この30度という単位はどうやってつくられたのか? と問われたら知っている人が少ないのではないだろうか。かのナポレオンはフランスが生み出したメートル法について「征服者はいつか去る。だが、この偉業は永遠である」と言ったそうだ。もう一つ付け加えれば、度量衡が混乱していたことがフランス革命の要因の一つになったとか。「計測の歴史」に迫る一冊。
シミュレーション
夏の夜、とある田舎で夜空を見上げると「夏の大三角」、うっすらと天の川らしきものを見ることができた。この宇宙を構成する要素として人間が知っているのは、その5%に過ぎず、残りの95%は、ダークマターやダークエネルギーという、人類にとって未知なもので、できているという。未知であるのになんでそんなことが分かるのかといえば、「シミュレーション」の賜物なのだ。スーパーコンピューターによって新しい宇宙の歴史像を示す。
これはSFではない!
以前「ネットフリックス」の番組で、脳の意識をデジタル化することで、色々な体に乗り移ることができるというSFを見たことがある。意識をアップロードすることができれば、体は滅んでも生き続けることができる。そのようなことを本気でやろうとしている研究者がいると知って驚いた。しかも、方法論としてはもはや完成しているように読めた。これまでの研究で人間の脳を左右に切り離すと、2つの意識が現れることが分かっているそうだ。そこで、脳の半分を機械でつくった脳とつなげることで、意識を移し替えることができるというものだ。不老不死への挑戦が始まろうとしている。
金継ぎの器
イギリス軍兵士としてアフガニスタンに従軍した際、即席爆発装置(IED)を踏んで両足を失った筆者。しかし、憐みの声をかけてくれる人には怒りを感じた。「身体が損なわれたとしても、人間はそれに適応することができるはず」という思いで筆者自身、義足での生活に慣れるように努力し、障害をサポートする医療技術の現場を訪ねていく。そんな筆者が日本の技術である「金継ぎ」の器を最終章で紹介し、自分の姿と重ねる場面は感動的だ。
忘れることは必要不可欠
「物忘れ防止の方法」──。このようなタイトルがつけられた書籍や記事は後を絶たない。本書では、そんな様々な情報とは一線を画し、「忘却」が持つプラス面について書かれている。脳には記憶を忘れる仕組みがあり、それは流動的なこの世界にとっては好都合である。感情の忘却は、私たちを苦痛や憤りのような負の感情から解き放ち、また、適度に忘れて記憶間の結びつきを緩くすることは、創造性にも関連してくるからだ。「忘却」の思わぬ大切さに触れられる書籍だ。
WEDGE編集部