情報過多の時代を生き抜く CNNに学ぶメディアの未来とジャーナリズムの使命
情報過多の時代におけるニュースの選び方
CNNは、世界の出来事を報道するだけでなく、トラベルやテクノロジー、ビジネス、フードといった特定のテーマに焦点を当てた「バーティカルコンテンツ」も制作している。 「なぜ私たちがこれを行うのかというと、ジャーナリストのユニークな視点に価値があると考えているからです。例えば、トラベル番組を30分放送する場合、ただ流行りの観光地を紹介するのではなく、地元の隠れた魅力をジャーナリストが掘り下げて発信することを大切にしています。日本に駐在する特派員も、グローバルな視点を生かして日本独自の内容を発信するようにしています。特に日本のコンテンツは、グローバルオーディエンスに引きが強いんです。過去で言うと、キャラ弁であったり90歳のアプリ開発者を特集した際には、大きな反響がありましたね。沖縄にジャーナリストが行き、高齢者に長生きの秘訣を聞くこともありました。こうして、ただ出来事を報道するのではなく、ジャーナリスト独自の視点で切り取ることで、視聴者に面白いと感じてもらえるコンテンツが生まれ、ファンがついてくるのです。このように、ニュースとバーティカル両方の視点からコンテンツを届けることが、CNNの強みであり、他にはない特徴だと思います」 こうした2つの視点で報道を行うCNNだが、情報過多の現代では、必要な情報を選び取ることは容易ではない。アルコリズムの発展により、偏った情報しか目にしないフィルターバブルの問題も浮上している。では、情報が溢れる中でどうすれば必要な情報を選び取れるのか。 「今の時代は受け身でいると、高度にターゲティングされた情報しかニュースフィードに表示されないため、自分が興味のあることだけを見ているうちに知識が偏ってしまいます。特に若年層は限られた時間で効率的に情報を消費しようとし、興味がある内容だけで完結しがちです。これは、知識の広がらないリスクになっていると思っています。だからこそ、意識的に自分がまったく興味のないニュースを、1日3つでもクリックしてほしいんです。思いがけず、新しい関心が生まれるかもしれません。私自身、勉強は得意ではありませんが、世界情勢のニュースを見て世界史に興味持ち、もっと知りたいと単行本を買ったこともあります。最近では、イスラエル・ガザの戦争がその一例で、ただ『かわいそう』と感じるだけでなく、なぜ戦争が起きているのか、その背景や影響について考えていくと、視野が広がるのではないかと思います」 CNNでも、世界の出来事に触れてもらう機会を増やすために、視聴者との接点の創出に注力している。 「今後の未来を考えると、やはり若年層にニュースを届ける必要があります。そこで、テレビ、デジタル、SNS、ストリーミングサービスを通じてニュースを配信し、どこにいてもニュースにアクセスできる環境を整えています。オフラインとオンラインの境目が曖昧になりつつ現在、オムニチャネル化を進めることで、どこでもニュースを取得できる環境をつくることが、世界の出来事に触れるきっかけになると思います」