囲碁将棋の目標は“死ぬまで漫才やってたい”? 単独で更新する漫才師としてのライセンス
囲碁将棋が、単独ライブ「曼珠沙華」を12月1日(日)に大阪・なんばグランド花月で、12月28日(土)に東京・ルミネtheよしもとで開催。それに先駆けて囲碁将棋の2人にインタビューを行い、単独ライブや「THE SECOND」に懸ける思い、漫才師としての最終的な目標などを聞いた。 【画像】囲碁将棋(他5件) ■ 生意気言わず一生出ようかな ──今年は日比谷野音での単独ライブや5都市を回る全国ツアー、そして年末の単独ライブ「曼珠沙華」と、かなりの数の単独をやられています。 文田大介 ツアーは本当にただただ楽しかったし、「お客さん増えたな」と思えてよかったです。仙台から車で40分ぐらいのところとかでやったんですけど、たくさんの人がわざわざコミュニティバスに乗って来てくれて。本来そんなにたくさんの人を乗せるバスじゃないから揺れに揺れて、みんな酔ってたらしいんですけど(笑)。そうまでして来てくれてうれしかったですね。 ──近年、テレビやラジオなどいろんな仕事が増えてきている中で、“単独ライブ”はお二人の中でどういう位置付けのものですか? 文田 僕らは「年に1回やらないと漫才師としてのライセンスを更新できない」と思っている節があるんですよ。だから義務感でやっているところがけっこうあるというか。1年に1回ぐらいはやっておかないとお客さんがどんどん減っていっちゃうんじゃないかなという不安もありますし。 根建太一 昔の長渕剛も1年に1枚は必ずアルバムを出してましたからね。最近はペースが遅くなってるけど、1年ごとに絶対アルバムを出してた頃の長渕がマジでカッコよかったんで、僕らもそうありたいんですよ。開催時期が年末なせいでめちゃくちゃ「THE SECOND」に向けてやってる人たちみたいになっていて、そこだけ恥ずかしいですけど(笑)。 ──実際は単独に向けたネタを作るときは「THE SECOND」のことは意識していないんでしょうか? 文田 ネタ作りの段階で意識することはないけど、単独で反応がよければそれを「THE SECOND」に持っていきたいという気持ちはあります。いらぬこだわりかもしれないけど、1本は新ネタをやりたいので。ただ、「THE SECOND」は勝つことよりも参加することに意義があると思ってるから、正直「いい成績を残せたらラッキー」ぐらいの感覚で。なんなら優勝したらもう出られなくなっちゃうじゃないですか(笑)。それよりもずっと出続けていたいという気持ちのほうが強い。 根建 「絶対勝ちたい!」みたいな気負いは、僕もまったくないですね。もちろん優勝できたらそれが一番うれしいですけど。 ──なるほど。では今年のノックアウトステージでの敗退も、ものすごく悔しいという感じではなかった……? 文田 いや、めちゃくちゃムカつきましたよ(笑)。 根建 だいぶ悔しかったですね(笑)。負けた当日は相当悔しかった。 文田 ただ、ガクテンソクが優勝して、ザ・パンチさんがいい成績を残して、タモンズが決勝に出て……みたいなことに「よかったな」とは思えたし、全体で見たら悔しさよりもそういう感情のほうが大きかったと思います。 ──「THE SECOND」ができたことで「ずっと戦わなきゃいけなくなった」という面もありますよね。お二人は出続けたいという気持ちのほうが強い? 文田 いやだって、「お前戦っとけよ」って人のほうが断然多いじゃないですか(笑)。戦えるだけマシだろ、みたいな。「戦わなくても生活の基盤ができているのに、『THE SECOND』ができて戦わなきゃいけなくなった」という人もいるとは思うけど、この場があってよかった人のほうが圧倒的に多いんで。 根建 僕らは場所を用意してもらっている感覚ですね。 文田 だから生意気言わず一生出ようかなと思ってます。「THE SECOND」のおかげで“おじさん漫才師枠”みたいなのができて、ほかの仕事にもつながってますしね。 ■ 囲碁将棋はデザイン重視の自転車 ──「絶対勝ちたい!」みたいな気持ちはないとのことでしたが、来年の大会に向けてネタの作り方を変えるとか、そういうこともあまりしていないですか? 根建 もうちょっと緊張せずにやれるネタでもいいのかなとはちょっと思っています。もっとやり慣れたネタというか、のびのびできるネタをしたほうがいいのかもしれないなと。 文田 僕らだけ“発表会”をやっちゃってましたからね。もともとあるネタを6分間に縮めて、めちゃくちゃ練習して、それをとにかく間違えずに披露するっていう。そういう“発表会”をやっちゃうと「THE SECOND」では浮いちゃうんですよ。「M-1」の予選ではネタをしゃべれているかどうかわからないくらい緊張していたけど、「THE SECOND」にはそこまでの緊張感はなくて。 ──その「THE SECOND」と「M-1」の緊張感に違いがあるのはなぜだと思いますか? 文田 6分間というネタ時間の長さと、お客さんの空気の違いかなと思います。「THE SECOND」のお客さんは「M-1」よりも年齢層が高いので、人として懐が深いんですよ(笑)。“好きじゃない人では笑わない”みたいなことがない。だから逆に発表会をやっちゃうと、「噛まないかな?」みたいな余計な緊張感が生まれてしまうし、ゆったりとネタをやっている人のほうがウケるんだと思います。ガクテンソクも作りとか練習量は発表会だけど、内容自体は四条の言い間違えをずっと訂正するという、わかりやすいものなので。 ──確かに去年、一昨年の大会でのお二人の戦い方は明らかに異質な印象を受けました。ただ、そこにカッコよさを感じる人たちもいたと思います。 文田 “あえてそういうふうにやっています”という見せ方をしてますからね。「僕らはツカミなんてやりません」みたいな。実際は「THE SECOND」にアジャストできてないだけなんですけど(笑)。「M-1」みたいな戦い方をするにしても、“賞レースで戦うための筋肉”みたいなものはめちゃくちゃ落ちてますしね。「M-1」とは違うやり方の人が多いから際立つだけで、去年まで「M-1」に出てたななまがりとかと比べるとやっぱり違う。 根建 最近まで4分の漫才で戦っていた人たちはやっぱりすごいです。バチバチに仕上がってるし、ネタの締まり方が全然違います。観ててシンプルに「すげえ」って思いますもん。 ──お二人にとっては“賞レースで戦うための筋肉”を保つうえで、毎年の単独ライブの影響もかなり大きそうですよね。 文田 それは確かに大きいと思います。ネタってねじとかと一緒で、ちょっとずつ緩むんですよ。「最初は4分でやっていたネタがいつの間にか7、8分になっちゃってた」みたいな、そういう緩みがあって。単独をやることでそれを締めてるような感覚です。というか、僕らは漫才師としてのスキルがめちゃくちゃ低いから、定期的に単独をやらないとヤバいんですよ。デザイン重視の自転車みたいな感じで、早く走ったりとかはできないから。 根建 全然早く走れないです。 文田 雰囲気だけの自転車なんで(笑)。 ──ご自身ではそういう自己評価を持っているんですね。 文田 冷静に分析するとスキルは相当低いですよ。めちゃくちゃ噛むし、テンポも崩れるし、自分でネタを観て「どうしてそんなふうになっちゃうの?」と感じることだらけです。 ■ 目標は「死ぬまで漫才やってたい」? ──囲碁将棋のお二人がどういう目標を持って活動しているのか、案外みんな知らない気がするんですが、最後に“漫才師としての最終的な目標”をお聞かせいただけますか? 文田 NGK(なんばグランド花月)でトリを務めたいとか、そういうのは正直ないんですよ。技量が低いし、芸事として突き詰められてはいないので。だからまあ、楽しくやれてたらいいかなと思ってます。メシが食えなくなってまで漫才を続けるかというとそれはないと思うから、死ぬ直前まで漫才をやれてるということは死ぬ直前まで漫才でメシを食えてるってことで。そういう意味での「死ぬまで漫才やってたい」が目標ですね。バイトしながら、家族にもないがしろにされながら月1回の舞台に立つ、みたいな形ではなく“完走”したいです。 ──根建さんはいかがでしょうか? 根建 目標ですか。目標かあ……正直ないんですよね。 文田 「目標ない」って言ってカッコよくなるタイプじゃねえだろ(笑)。本当にただ目標がない人じゃん。 根建 めちゃくちゃシンプルですけど、僕もずっと劇場で漫才はやり続けていたいので、強いて言うならそれが目標になるのかなと思います。いろんな仕事があると思うけど、この先も単独ライブを毎年やれたらうれしいです。お客さんが来てくれなかったらできないんで、単独をやれてるということは僕らの漫才を好きな人がまだそれなりにいるということだと思いますし。 文田 賞をもらいたいとか、そういうのは2人ともあんまりないよな。 根建 マジでないですね。 文田 紫綬褒章ほしいとか全然ないよね。 根建 ぜってえ無理だろ、紫綬褒章は。あ、でも「国民的スターになって飛行機のラッピングになりたい」っていうのはずっと言っていて。なので“劇場で漫才をやり続ける”と“飛行機のラッピングになる”の2つが僕の目標です(笑)。 (取材・文 / 石井佑来) ■ 囲碁将棋単独ライブ2024「曼珠沙華」 日時:2024年12月1日(日)19:00開場 19:30開演 21:00終演 会場:大阪・なんばグランド花月 料金:前売3500円 当日4000円 日時:2024年12月28日(土)19:00開場 19:30開演 21:00終演 会場:東京・ルミネtheよしもと 料金:配信2000円(会場チケットは完売)