熊本地震で阪神級M7.3、震度と違いは 早稲田塾講師・坂東太郎の時事用語
熊本県を中心に多くの余震が続いている「熊本地震」で、気象庁は、震度7でマグニチュードが6.5だった14日夜の地震が実は「前震」で、震度6強でマグニチュード7.3を記録した16日未明の地震を「本震」であるとの見解を発表しました。また、15日未明に熊本県宇城市で震度6強を記録した地震では、長周期地震動が初の階級4を観測しました。ここでは、地震を理解するためのキーワードとして、あらためて「震度」と「マグニチュード」、「長周期地震動」とはどういうものか、などについて考えてみました。 【図】<熊本地震>14日夜の震度7は「前震だった」 本震・余震との違いは?
■阪神大震災級の「M7.3」
マグニチュード(M)とは、震源地で測定された地震そのものの規模です。熊本地震のそれは6000人以上の死者・行方不明者を出した1995年の阪神大震災における数値と同じです。 ではビックリするような大きさかというと日本ではそうでもありません。例えば昨年だけでもM7レベルは5月30日の小笠原諸島西方沖地震(M8.5)と11月14日の薩摩半島西方沖地震(M7.0)と2度ありました。年に1~2回は発生している計算になります。Mが1大きくなるとエネルギーは約32倍となります。2上がると約1000倍。改めて東日本大震災のM9.0のすごさがわかります。 やや小さいM6以上を数えると世界の地震の5回に1回(約20%)が日本で発生しています。面積比では0.3%以下なのでいかに集中しているのかがわかります。あまりにも多すぎて、あるいは耐震技術の進歩によってこうした事実には驚かないのが日本人の特質、あるいはこの地で生まれ育った者の宿命というべき状態なのです。
■東日本大震災以来の「震度7」
震度とは、その場所での揺れの大きさ(揺れ方の強弱)です。Mは1つであるのに対して震度は震源の深さや距離などによって異なってきます。一般に直下の震源が浅いほど震度は大きく、また離れるほど小さくなります。気象庁が全国約600か所の地点に設置した震度計で測定します。かつては観測員の体感で発表していましたが、今は機械化されています。 熊本地震では4月16日に発生したM7.3の「本震」以前の14日の「前震」(M6.5)で最大震度7を記録しました。 気象庁が決めている「震度階級」は0から7までの10段階です。つまり震度7とは「これ以上の揺れは存在しない」という最悪レベルとなります。震度計で6.5以上になれば指定されます。 震度5以上が危険性が高く、5と6にはそれぞれ「弱」と「強」があります。5弱以上で建物の崩壊や人間の行動への障りが出てくるとされ、6弱となると、立っているのさえ難しくなります。気象庁によると6強と7で「立っていることができず、はわないと動くことができない。揺れにほんろうされ、動くこともできず、飛ばされることもある」としており、7だと「固定していない家具のほとんどが移動したり倒れたりし、飛ぶこともある」と指摘しています。 震度7が設けられたのは1949年から。これまでに、阪神、東日本の2つの大震災に加え、2004年の新潟県中越地震でも記録しています。他にも震度7を設けるべきという議論の発端になった1948年の福井大地震も今の基準であれば「7」となった可能性が大です。1923年の関東大震災もそのクラスだという意見も多く存在するのです。 「震度7」が作られた1949年には「激震」という名称も添えられました。こうした漢字表記は96年に廃止されて現在の震度階級となるのですが「激震」という言葉は今でも比喩として使われています。政治の世界が思わぬ混乱に見舞われた時「政界に激震が走る」という具合に。 なお2013年に中央防災会議などが公表した首都圏直下で起きるM7級の地震の想定は東京都心の東側を中心に震度6強から7の震度を観測すると予想しています。今後30年間に70%の確率で発生するというのですから恐ろしい。死者は最大で2万3000人と被害を想定しているのです。