ジム消滅ショックの亀田京之介が僅差判定負けで新人王逃す。挑発、そして号泣「めちゃくちゃプレッシャーがあった」
セコンドから「ジャブを突け」の声が飛び、亀田は「聞こえていた」と言うが、もう下がることしかできなかった。 「パンチをもらうことにびびっていた。パンチを出さな、出さなと、わかっていたんです。今回の試合はジャブがカギとわかっていたけど」 亀田も足を止めて必死に応戦するが、ダメージを受け、なかば、うろたえているように見えた。 「(足を徹底して使うのは)練習通りだったが、変な打ち合いをして、何発か効いた。意地でも絶対に倒れへんと。強かったですよ。パンチは全部見えとったけど、結果は結果がですからね」 ガードを固めて逃げまとい。やがてゴング。 1、2ラウンドは亀田、3,4ラウンドは前田の「ドロー」で、ダメージの大きさで前田の優勢勝ちと筆者は見たが、1ラウンド、3ラウンドに対するジャッジ評価が分かれ、2-1の僅差で前田が勝利をつかむことになった。 「僕もプレッシャーがあったんですが、ここまで盛り上がる試合ができたのは亀田選手のおかげ。彼が一番プレッシャーを感じていたと思う。その中で正々堂々と戦ってくれた亀田選手に敬意を表したい」 プロ4戦目の前田は、リングを降りた敗者の心中をおもんばった。 業務委託契約の解除を通告された金平桂一郎会長が9日に東日本ボクシング協会に対して「休会届け」を出したことで「協栄ジム」が活動休止。亀田の所属先が宙に浮き、一時、新人王戦への出場も危ぶまれた。東日本ボクシング協会の花形進会長が、救済を申し出て、緊急避難的な3か月契約で花形ジムに所属することとなり新人王出場が可能になった。大事な最終調整時期のドタバタに関して亀田自身は、「とくに(影響は)ないですよ。どこで練習とかじゃなく、自分がダメだっただけですよ」と言い訳はしなかった。 だが、内田チーフトレーナーは「少なからず影響はあったと思う。自分も協会との手続きなどで、練習を見られないときもあった。選手には申し訳なかった。いつもの環境でそのまま望ませたかった」と証言した。亀田の前の試合となるスーパーバンタム級では、もう一人の元協栄で花形ジムに臨時移籍した竹原毅(24)も判定負けを喫していた。 注目を浴びて必要以上のプレッシャーはあったという。 「プレッシャー? めちゃくちゃありました。なんか嫌な緊張感。いつもと違う緊張感です。リングに上がっても落ち着かない自分がいた。決勝って怖いなと。嫌な雰囲気を感じていた。でもいい勉強はできましたよ」 ビッグマウスの亀田が、そう心境を正直に告白した。 まだ21歳。亀田家初のタイトル戦の舞台を、この状況の中で乗り越えていくのは少し酷だったのかもしれない。