ジム消滅ショックの亀田京之介が僅差判定負けで新人王逃す。挑発、そして号泣「めちゃくちゃプレッシャーがあった」
プロボクシングの第66回全日本新人王戦が22日、後楽園ホールで12階級12試合が行われ、注目カードのフェザー級4回戦、東軍代表の亀田京之介(21、花形)対西軍代表、前田稔輝(23、グリーンツダ)の一戦は、前田が2-1判定で競り勝ち、敢闘賞に選ばれた。 亀田3兄弟の”いとこ”である京之介は、リングに顔を埋めて号泣。ジム移籍騒動などのプレッシャーを「めちゃくちゃ」感じていたという亀田は、今後の進退について「どうなるかわからない」と明言を避けた。勝者の前田は、日本拳法の”達人”から転向1年の異色ボクサーで、早くも来年4月12日の次戦が内定。来年はマイナータイトルを総なめにして再来年には日本タイトル挑戦の青写真を描く。また大会MVPには、大逆転TKO勝利を収めたスーパーライト級の本多航大(20、川崎新田)が選ばれた。
挑発パフォーマンスも空転
タオルを頭からかけた亀田がリングに顔をうずめて号泣した。悔しさを隠そうともせず、右手で何度も白いキャンバスを叩く。ジャッジの3人のうち一人が「39-37」で亀田、もう一人が「39-37」で前田。最後の一人のジャッジが「39-38」で「勝者、青コーナー、前田!」とコールされると、亀田は崩れるようにして倒れ込んだ。 「ギリ勝ったかなと思ったが、前田君も強かった。パンチあったし効いたパンチもあった。前へ行かれへんかった」 涙を拭いた控室の亀田は潔かった。 一方の接戦を制した前田も声をあげて泣いた。 「見方によれば負けているかなとも思った。何とか勝つことができたが、今日は0点。ずっと自分じゃないみたいで」 それほど微妙な勝負だった。 スタートは亀田劇場だった。サイドにステップを踏み、ノーガードで顔をつきだし、両手を広げて不敵に笑う。”ここを打て”とばかりにグローブでジェスチャー。ジャブを数発出しただけで、ありとあらゆる挑発を続けた。場内からは「ボクシングをやれ!」のヤジとブーイング。だが、亀田には狙いがあった。 「あれは作戦。相手をイライラさせ、大振りのボクシングをさせる。でも、余裕はなかったです。それにのってくれなかった」 1ラウンドのインターバル。一方のグリーンツダジムの本石昌也会長の声が記者席まで聞こえた。 「おまえはおまえのボクシングをすればええ。クールに。挑発に乗ったらあかんよ」 前田がうなずく。 「挑発に乗ってはいけないことはわかっていたのですが、上手にジャブを当てられ、リズムを崩されクールにいけなかったんです」 亀田がペースアップした。2ラウンドは、「当てては動く、動いては当てて」のヒット&ウェーの作業を徹底して前田を翻弄していく。 強い右フックもクリーンヒットさせた。パンチを返されても、クビを振り「効いてない」のポーズ。右腕をグルグル回すなど派手なパフォーマンスも続けた。 3ラウンドも、亀田は右フックを当てるなど、ラウンドを支配しかけたが、サウスポースタイルの前田が、形勢逆転を狙って前へ出てプレスをかけると様子が変わり始めた。突き刺すような必殺の左のボディストレートを立て続けにヒットさせて亀田の足を止めた。 前田は日本拳法4段の有段者。大商大2年時には全国制覇している。 「あのボディは空手の正拳突き。拳は縦にするんです」 4ラウンドには、威力のある左ストレートで亀田をロープに張り付けて追い詰める。京之介には、気の毒だったが、”聖地”後楽園のファンは、やはりほとんどがアンチ亀田。前田の左ストレートが炸裂、亀田が劣勢になる度にどっと沸く。