小中学校は通わず高校は通信制、芸大に進み夢をかなえた作曲家「不登校の経験がずっと私を支えてくれた」
坂本龍一さんに影響受け
通信制の高校を選ぶと、ゲーム音楽や音楽家・坂本龍一さんに影響を受けて作曲家を志した。音楽経験はゼロだったが、週に3回、作曲などの大学入試に向けたレッスンを受け、帰宅後もピアノの猛練習を続けた。「誰も歩いていない道をひとりで歩いてきた不登校の経験が、ずっと私を支えてくれた」のだという。
2浪して念願だった東京芸術大の作曲科に入学し、大学院にも進んだ。当時、SNSに書いていた不登校の経験が出版社の目にとまり、執筆を依頼された。
漢字はハリー・ポッターの小説で覚えたことや、情熱を持てる課題曲を選ぶといった受験のテクニックをわかりやすく書き込んだ。タイトルの「クエスト」はゲームにちなみ、曲折しながら自らの道を進んでいく前向きさを込めた。
マイナスのイメージで語られがちな不登校だが、自身と同様、学校という枠組みに合わせることを難しく感じる子どもも多いのではと考える内田さん。作曲家としての活動とともに、自身の歩みを伝える講演も始めるという。
「学校に行かない、行けないからといって悲観する必要はまったくない。義務教育を受けたことのない私が言うのだから間違いない」と力を込める内田さんは、我が子を心配する親や周囲の大人に対しても、「子どもを信じて見守ってほしい」とエールを送る。
不登校の小中学生、11年連続で増加
文部科学省によると、2023年度に全国の小中学校で不登校の児童や生徒は過去最多の計34万6482人で、11年連続で増加した。九州と山口・沖縄でも前年度比約7500人増の5万952人と、10年前の3倍超に急増している。
保護者に「無理して学校に行かせなくてもいい」という意識が広がっていることに加え、コロナ禍で生活リズムが乱れたことも要因の一つと考えられるという。
昨年度に不登校の子どもが5177人に上った福岡市は来年4月、中学生向けの「学びの多様化学校」を新設し、40~60人ほどを受け入れる。遅めの始業や1日の授業時間を4時間ほどに絞るといった柔軟な運用が可能になる。九州と山口・沖縄には現在4校あり、宮崎県延岡市は「生徒が意欲的に学ぶようになった」と効果を説明する。
◆不登校=年間30日以上登校していない状態で、病気や経済的な理由などは除く。文部科学省の調査では、「学校生活にやる気がでない」や「不安・抑うつ」「生活リズムの不調」といった理由が目立ち、「いじめ被害」を挙げたのは全体の1%ほどという。