【ラグビー】主軸休養のフランス。フレッシュなメンバーでアルゼンチンに挑む。
フランス代表の夏の遠征が始まった。 トップ14の準々決勝(6月15、16日)が終わった翌日、パリ郊外の国立ラグビーセンターの合宿所でアルゼンチン遠征の準備合宿をスタートした。準決勝に進出する4チームの選手を除いて選考された32人の選手が招集された。 また、例年通り、グレゴリー・アルドリットやシャルル・オリヴォンのようにファビアン・ガルチエ ヘッドコーチ(HC)から『プレミアム・プレーヤー』にランク付けされた20人の選手も選考外で、長いシーズンの疲れを癒す。 選考された32人のうち、19人がノンキャップの選手だった。昨年のU20世界チャンピオンメンバーもいれば、今年まだU20のカテゴリーの選手もいる。 その週の土曜日(6月22日)にはルーマニアとゲーム形式の練習を行なった。「ルーマニアはフィジカルが強く、経験豊富な鍛え上げられたチームでアルゼンチンに似ている」とスクラムコーチのウィリアム・セルヴァットが言っていたが、ルーマニアのダヴィッド・ジェラールHCによると、「この日は18人の選手を欠き、若く経験の浅いチームだった。しかも前日の夜10時に国立ラグビーセンターに着いたばかりで、全く相手にならなかった」と言うことだから、フランスチームのスタッフが考えていたことがいかほど実現できたのだろうか。 その夜、トップ14の準決勝が終了すると、敗退したスタッド・フランセとラ・ロシェルから11人の選手を追加した、遠征に参加する42人の選手が発表された。22人のノンキャップの選手を含む、平均キャップ数4、平均年齢24.5歳の若いグループになった。 このグループにはU20の選手が4人入っている。現在、南アフリカで開催されているワールドラグビーU20チャンピオンシップでは、フランスは3連覇中だ。4連覇を目指す今大会だが、フランス協会のジャン=マーク・レルメ副会長が、「選手の選考に関しては、アルゼンチン遠征が優先される」と5月に発表していた。ちなみに、フランスU20は、7月4日のプール戦第2戦でNZに80分のPGで逆転され1点差で敗れ、決勝トーナメント進出が危ぶまれている。 アルゼンチンとの第1戦のメンバーだが、当初6番に選ばれていたジュディカエル・カンコリエが欠場し、リザーブだったレニ・ヌシが先発に繰り上がり、イブライム・ディアロがベンチに入ることになった。ヌシは昨年U20代表のキャプテンで、今季終盤は残留をかけて苦しい戦いを続けていたモンペリエでもキャプテンを任されていた。 4番ユーゴ・オラドゥ、7番オスカー・ジェグ、14番テオ・アティソグベも昨年のU20世界チャンピオンで、今季はトップ14で連戦している。特にアティソグベはシックスネーションズを戦っていたU20代表から声がかかっていたが、所属クラブのポーで主力になっているためリリースしてもらえなかったほどだ。 NO8にジョルダン・ジョゼフの名前も見られる。1998年にフランスがU20チャンピオンシップで優勝した時に、17歳で最優秀選手に選ばれ期待されたが、所属していたラシン92では出場機会が得られず、ポーにレンタル移籍し、プレー時間を積み重ね、メンタル面でも成長し、今季ラシン92に戻って主力メンバーに定着した。満を持しての初キャップと言えるだろう。 今回の遠征で最も注目されているのは、12番のアントワンヌ・フリッシュだ。パリ近郊のフォンテーヌブロー生まれのフリッシュは、子供の頃からプロラグビー選手を目指していた。イングランドとアイルランドの血を引く母を持つことから、イングランドのラフバラー大学に1年留学し、帰国後スタッド・フランセのエスポワール(育成組織)に入団した。2年所属したがプロ契約を得られず、3部リーグのタルブ、マシーと転々とした後、2部リーグのルーアンでようやくプロとしてプレーすることができた。 しかし翌年ルーアンは3部リーグに降格する。フリッシュのエージェントがプレミアシップに彼のプレーの動画を送ったところ、ブリストルのパット・ラムHCの目に留まり1年契約を結んだ。翌年アイルランドのマンスターから声がかかり、この2年はマンスターで活躍し、2022年9月にはエマージング・アイルランドにも選ばれていたが、まだアイルランド代表でプレーはしていない状態だった。 そんな彼にガルチエHCは注目しており、今年3月、シックスネーションズの合宿にフリッシュを招集して1週間代表チームで過ごさせていた。来季からトゥーロンでプレーすることが発表されている。 このチームをキャプテンとして率いるのはSHバティスト・セランだ。今年のシックスネーションズでもアントワンヌ・デュポンが7人制に参加するため不在となり、セランの復帰が予想されていたが、負傷のため参加できなかった。 「集団的経験値が本当にゼロのチームだ。選手は初キャップの感動を抑えなくてはならない。かなり難しいチャレンジになる。セランは30歳、キャップ数も40を超える(44キャップ)。最も経験のある選手だ。今年のトゥーロンでのパフォーマンスも良かった。リーダーシップ、プレーの指揮、経験という点で重要な選手だ。彼にキャプテンをしてもらうことで、他の選手が自分のパフォーマンスに集中できる。」とガルチエHCはセランをキャプテンに指名した理由について説明する。 「過去20年でアルゼンチンでは8戦して2勝しかできていない。この地で勝つことがどれほど難しいことなのかを物語っている。選手は2週間で多くの情報を消化し、練習もしなければならなかった。新しい選手も多い。とても難しいチャレンジだ。全員が一緒にプレーできるようにアタックをシンプルにした。その中で全員がそれぞれの才能を発揮できるかどうかは、スピードがカギとなる」とアタックコーチのパトリック・アルレタズは明かす。 アルゼンチンにとっては、ワールドカップ後、HCにフェリペ・コンテポミが就任してから初めての試合だ。キャプテンのHOフリアン・モントージャら14人がW杯スコッドメンバーで、三重ホンダヒートのFLパブロ・マテーラにとってはW杯日本戦で怪我して以来の代表復帰戦となる。 【アルゼンチンvsフランス】 現地時間7月6日(土)16時キックオフ(日本時間7月7日04時) (文:福本美由紀)