外国人労働者、企業の16.7%が「採用を拡大」 昨年初の200万人超え、今後も緩やかに増加か
本調査では、多様な人材の雇用・採用についても同様に尋ねている。管理職登用の動向が注目されている「女性」を雇用している企業は77.9%と多くを占め、今後採用を拡大する方針の企業も19.4%と他より高い。また、定年制の見直しに動く企業も多くみられるなか「シニア」の採用拡大に関しては、10.9%だった。
外国人雇用の課題、教育・コミュニケーション面が突出 費用や手続き負担に苦慮する声も
外国人労働者を雇用する際の課題について尋ねたところ、「スキルや語学などの教育」(55.1%)と「コミュニケーション」(55.0%)が突出して高い結果となった。実際に「採用前の段階で、ある程度の語学スキルがないと採用しにくい。小規模事業者には教育できる人的資源やノウハウがなく、語学習得に関する公的な支援施設がない」(家庭用電気機械器具小売、鹿児島県)など、課題と分かっていながらも具体的な解決策を講じられないという声が相次いだ。特に、教育面では資格や免許が求められる建設業と運輸・倉庫業において、コミュニケーション面では同業種に加えて接客機会の多いサービス業で特に高水準だった。 これらの2項目以外にも、「日本人と同等以上の賃金がマストだが、必要機関への経費負担が大きく、一人当たりの人件費は非常に大きい」(はつり・解体工事、千葉県)や「過去に雇用していたが、生活面や就労支援の負担が大きい」(鉄鋼シャースリット業、北海道)、「技能実習生がいるが、法改正が予定されるなど今後が不透明。面接しても来日するのは半年以上後になるので、今後の方針が見えないと動けない」(塗装工事、山梨県)などの悩みを抱えている様子がうかがえた。
今後の見通し:外国人労働者は引き続き緩やかな増加と予想、一方で慢性的な課題も
当調査では、採用を拡大する意向のある企業は約2割となったものの、個人向けサービス業などでは意欲的な傾向が表れた。これらの業種では人手不足が高止まりしている現状を踏まえると、当分野では特に外国人労働者のニーズは強まることが予想される。 今後は政府の支援策にも注目が集まるだろう。今回打ち出された育成就労制度では、技能実習制度では原則として禁止されていた他企業への転籍が認められるようになる制度変更が目玉だ。その要件の一つには、特定技能の認定に必要なレベルよりも易しい日本語能力検定N5段階が求められるが、外国人就労支援の関係者からは「N5段階の転籍は、受け入れ企業の苦労が増すのでは」と指摘する声も聞かれる。日本語能力向上プログラムの抜本的な改善が見られない現状を鑑みると、当調査で主な課題となった教育・コミュニケーション面は今後も大きな課題となろう。企業からは外国人労働者の雇用に難しさを感じる意見が多いが、地域やサプライチェーンなど周囲を巻き込んだ就労サポートなど、自社単体だけではない幅広い連携が必要となる。