企業の52.6%が「人手不足」 建設・物流・医療業では約7割に、「2024年問題」は既に深刻
人手不足を感じている企業ほど「賃上げ」を実施予定
2023年の人手不足を要因とした倒産は260件にのぼり過去最多を大幅に更新し、人手不足による企業経営への悪影響が顕著にみられた一年だった。物価上昇にともない活発となった「賃上げ」は人材の確保・定着には欠かせない手段であるなか、いわゆる「年収の壁」問題から結果的に総労働時間の制約が指摘されるなど、課題は山積している。人手不足が2024年の景気を見通すうえで懸念材料の上位にあげられているなか、企業の人手不足の状況について調査を実施した。
人手不足割合は正社員で52.6% 非正社員も約3割
2024年1月時点における全業種の従業員の過不足状況について、正社員が「不足」と感じている企業は52.6%だった。前年同月比で0.9ポイント上昇しており、1月としてはこれまで最も高かった2019年(53.0%)に次ぐ高水準となった。また、非正社員では29.9%だった。前年同月から1.1ポイント減少したが、引き続き約3割の水準で推移している。
正社員・業種別:ITエンジニア不足の情報サービス、77.0%で過去最高を更新
正社員の人手不足割合を業種別にみると、主にIT企業を指す「情報サービス」が77.0%でトップとなった。15カ月連続で7割以上と高水準が続いているなか、過去最高を更新する結果となった。 その背景には旺盛なシステム関連需要があり、企業からは「企業のシステム刷新のプロジェクトが相次いで発生し、人手不足の状態が続いている」(東京都)や「企業の設備投資意欲が高く、人手が足りていない状況が継続している」(神奈川県)、「システム開発の案件が増えてきているが、人材不足で対応できず受注に結びつけることができない」(東京都)など、人手不足がボトルネックとなっている現状が多くみられた。 また、「建設」(69.2%)や活況なインバウンド需要が目立つ「旅館・ホテル」(68.6%)など、8業種が6割台となった。
「2024年問題」が懸念される建設/物流/医療業の約7割が人手不足
働き方改革関連法によって2024年4月から時間外労働に上限規制が適用されることで、労働力不足の深刻化と、それによる機能の行き詰まりが懸念されている「2024年問題」。その主な対象である建設/物流/医療業の3業種について人手不足の現状を見ると、正社員において物流業(道路貨物運送業)では72.0%、医療業では71.0%、建設業では69.2%の企業が人手不足を感じていた。2024年4月以降は一層の深刻化が予想されるなかで、既に7割の企業が人手不足に陥っている結果となった。 医療業では勤務医が同関連法の対象となるが、看護師の働き方改革も大きなカギを握る。人材の確保・定着を狙いとする賃上げは診療報酬の改定幅によって左右されるケースが多く、業界特有の背景に悩んでいる現状もみられる。