中小企業に眠る「賃上げ力」、6%アップ相当 「利益の3割」投下で ― 試算
企業の「潜在賃上げ力」分析調査(2024年度)
2024年の春闘は、大手企業で「満額超え」の回答も出るなど記録的な「賃上げ」が相次いだ。背景には、人手不足に加え、過去最高益を更新する企業も出るなど「稼ぐ力」の向上が挙げられる。 ただ、日本企業の労働分配率は2022年度に2年連続で低下するなど、これまで生み出した利益の多くが利益剰余金など内部留保として貯蓄され、賃上げなどで従業員への適切な配分がなされてこなかった可能性も指摘されている。企業の収益力に照らした「潜在的な」賃上げの実力が問われている。 帝国データバンクでは、過去1年間に決算を迎えた企業で常時雇用の従業員(正社員)が10人以上の約6万社を対象に、売上高から人件費や原材料費、法人税等を差し引いた、最終的な利益(当期純利益)=企業の内部留保相当分を次年度の「賃上げ原資」と定義し、人件費の増加分=賃上げにどれだけ充てることができるかを試算した。試算にあたっては、従業員数が期中に変動しないものとし、金融・保険業を除く全国全業種を対象とした。また、すべてを賃上げ原資とすることはできないため、純利益のうち「10%」「30%」「50%」をそれぞれ人件費に充てた場合と仮定した。人件費の増加に伴う営業・経常利益、法人税減免等の影響は無視した。
この結果、当期純利益の30%分を人件費へ「投下」した場合、平均で6.31%分の賃上げ率に相当する試算となった。帝国データバンクの調査で判明した、企業が想定している賃上げ率(4.32%)を上回ったほか、政府の要求水準(5%以上)、連合が集計した組合要求水準(5.85%)のいずれも上回る数値となった。 このうち、「中小企業」では平均5.90%の賃上げ率相当分に該当した。大企業では平均で18.93%相当の賃上げが可能だった。企業の内部留保とされる最終的な当期純利益の一部を人件費に分配した場合、組合要求を大きく上回る6%超の潜在的な「賃上げ力」が企業に眠っている可能性がある。