ペプチドリーム、大型買収の先に描く「第2の成長戦略」
ペプチドリームは、富士フイルムからの事業買収について「5年、10年の成長を考えると重要な意味を持つ」と位置付ける(撮影:尾形文繁)
低分子と高分子に続く第3の創薬技術として期待される中分子(ペプチド)創薬の最大手ペプチドリーム(4587)。今2023年12月期も売上高は前期比11.7%増の300億円に拡大する見込みだ。2022年3月末には、富士フイルムから約220億円で買収した放射性医薬品事業を連結化。ペプチドリーム本体が進める創薬開発と新設子会社PDRファーマが担う放射性医薬品の2事業を柱に、成長のギアを上げる体制も整えた。2026年12月期末に上市(発売)品を4件、臨床試験段階の開発プログラムを32件以上にする目標を掲げたうえ、急成長をもくろむペプチドリーム。ただ、2022年末時点で上市品はゼロ、臨床試験プログラム数も4(目標対象外の診断薬1を含む)と、開発の遅れは否めない。2017年に創業者の窪田規一氏(2021年に会長退任)からバトンを受け、経営の舵取りを進めてきたリード・パトリック社長兼CEO(最高経営責任者)と補佐役を務める金城聖文副社長兼CFO(最高財務責任者)の2人に、中長期の成長戦略、株価反転策、放射性医薬品事業買収の狙いなどを聞いた。――ペプチドリームは提携先や開発の数は多いが、開発が遅いと言われています。2026年末に上市品を4つ以上とする目標は達成不可能ではないでしょうか。 パトリック:臨床試験の前段階まで自社でできるようにしたことで、開発速度を上げてきた。今後はもっと早く臨床試験に入れるようになるため、上市数4つを達成する可能性はまだある。 一方、来年までに(3つある臨床試験の真ん中の)フェーズ2に1つも入れないとなると上市品4つの目標達成確率は低くなるだろうが、それはその時点で判断したい。 ――初期の共同研究開発はたくさんありますが、10年経ってもブリストル・マイヤーズ スクイブ(BMS)の案件を除けば、まだ臨床試験に入ったものがありません。 パトリック:薬の開発は難しい。当時は今ほど機能的に充実していなかったので、開発プログラムを前に進めることができなかった。ただ、われわれも機能を拡充してきた。パートナーに引き渡すシードの中身は、2010年当時の共同研究開発と最近の提携とではまったく違ってきている。 金城:パトリック社長になって、大きくモデルを変えてきている。提携先が優先的に開発を進めやすくするなど、開発のステージアップを図ってきた。 例えば、ペプチド薬物複合体(PDC)のプログラム数を増やしている。PDCだとわれわれが得意なペプチド技術を生かせるだけでなく、提携先も得意とする薬物を選択するので、優先的に開発を進めてくれる。実際、2017年以降はほぼすべての開発段階でプログラム数が増えている。
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大西 富士男