日米の稼ぐ力の差は、働く目的も要因? 7割が「やる気のない社員」という日本人の仕事観
仕事における「3つのカテゴリー」
「3人の石工(いしく) 」という話をご存じでしょうか。 ある人が、作業中の石工に「あなたは何をしているんですか?」と尋ねまし た。すると、3人の石工は次のように答えたそうです。 1人目の石工は、「親方の命令でレンガを積んでいるんだ」。 2人目の石工は、「レンガを積んで塀を造っているんだ」。3人目の石工は、「人々がお祈りをするための大聖堂をつくっているんだ」。
この話は、一口に「仕事」といっても、いくつかの意味合いがある、ということを示唆しています。実際、イェール大学の研究でも仕事には3つのカテゴリーがあると提唱されています。下の図にあるように、ジョブ、キャリア、コーリングです。いずれでもないものを、ここでは「趣味」としました。 「ジョブ」は、物質的な利益を得る手段としての仕事です。仕事の目的を達成するという意識は薄く、「お金のために働く」がこれにあたります。日本人の仕事は大半がジョブだといえるでしょう。「キャリア」は、目的を達成したり、職業人として成長したり、名声を得たりと、「自分の成長や業績のために」行なっている仕事になります。やっていることそのものが大好きであれば「コーリング」になりますが、業績を上げることだけが目的になっている場合は、好きなレベルは相対的に低いため「キャリア」に分類されます。 つまり、キャリアに「好き」が加わると、「コーリング」になります。「コーリング」は天から呼ばれる仕事(役割)という意味で、日本では「ライフワーク」「本当にやりたいこと」「天職」とも呼ばれます。目的とやりがいがあって、かつ、気持ちが満たされる仕事。生涯を通して「生きる原動力」になり、働いていて、「感謝」「喜び」「ワクワク」「幸せ」を感じられる活動です。 また、コーリングには大きな感覚から小さな感覚を含むものまで、さまざまな定義があります。 たとえば、コロラド州立大学のBryan J. Dik 教授はコーリングについて、「自分を超えた感覚に導かれていて、その仕事に対し、目的や意味を感じられるもの」という壮大な表現をしています。 また、現代的なコーリング感を研究するボストン大学では、「目的を感じて、それをやっていて意味があると思えるもの。それはどんな些細(ささい)な仕事でもコーリングになり得る」 と定義しています。 「3人の石工」のエピソードに戻るなら、1人目の石工はジョブ型、2人目はキャリア型、3人目はコーリング型の仕事をしている、といえそうです。 『1万人の才能を引き出してきた脳科学者が教える 「やりたいこと」の見つけ方』 向いている仕事、自分の強み、進むべき道を考えて、自分で、自分がわからなくなる……。こうした「自分探し」で悩む人へ、200以上の論文と7つのワークで、科学的にブレない自分軸を見出す「自己理解の方法」を解説する。¥1,815/PHP研究所 西剛志/Takeyuki Nishi 脳科学者(工学博士)、分子生物学者。武蔵野学院大学スペシャルアカデミックフェロー。T&Rセルフイメージデザイン代表取締役。東京工業大学大学院生命情報専攻修了。2002年に博士号を取得後、特許庁を経て、2008年にうまくいく人とそうでない人の違いを研究する会社を設立。子育てからビジネス、スポーツまで世界的に成功している人たちの脳科学的なノウハウや、大人から子供まで才能を引き出す方法を提供するサービスを展開し、企業から教育者、高齢者、主婦など含めて2万人以上に講演会を提供。『世界仰天ニュース』『モーニングショー』『カズレーザーと学ぶ。』などをはじめメディア出演も多数。TBS Podcast「脳科学、脳LIFE」レギュラー。著書に20万部のベストセラーとなった『80歳でも脳が老化しない人がやっていること』など海外を含めて累計38万部突破。
TEXT=西剛志