閉経前の月経不順と、子宮がんの不正出血を間違えないで!【更年期症状と間違えやすい病気に要注意! ⑥】
「子宮体がんを好発する年代は40代後半~60代。罹患しやすい人は、肥満、出産経験がない、糖尿病、多嚢胞性卵巣症候群(たのうほうせいらんそうしょうこうぐん/PCOS)※2の既往、がん家族歴があるなどが挙げられます」 ※2:卵巣に多数の卵胞が育つが、排卵しにくいため月経不順を起こす疾患。 「不正出血=子宮体がんのイメージですが、子宮頸がんでも起こります。子宮頸がんは若い人だけでなく、50代~70代の人も罹患するので油断は禁物です。子宮頸がんの場合はセックスのあとに出血することが多いのですが、出血がみられる状態では進行がんになっている可能性が高いので早めの受診が重要です」
子宮内膜増殖症は子宮体がんに移行することも!
不正出血が起こる病気にはほかに、子宮筋腫や子宮内膜増殖症などがある。 「子宮筋腫は子宮壁(筋層)の中に良性の腫瘍が発生するもので、女性ホルモンの作用で大きくなります。ですから、女性ホルモンの分泌が減少する閉経後になると小さくなります。 子宮内膜増殖症は子宮の内膜が過剰に増殖して厚くなる病気です。女性ホルモンには子宮内膜を増殖させる卵胞ホルモン(エストロゲン)と、排卵後に黄体から分泌される、子宮内膜の増殖を抑制する黄体ホルモン(プロゲステロン)があります。このふたつの働きにより、適正な内膜の厚さを維持しています。 ところが、エストロゲンが過剰になると、内膜が増殖し続けてしまいます。その原因は、肥満、月経不順、閉経前後の卵巣機能の低下、HRT(ホルモン補充療法)の際にエストロゲン製剤を単独で長期投与したケースなどが考えられます。 検査は経腟超音波検査と子宮内膜の病理検査で行います。治療は細胞異型(細胞や核の大きさが正常な細胞と異なる)がない場合は経過観察になり、約80%は自然に退縮します。不正出血が続くようであれば適正なホルモン療法を行うことも。 細胞異型がある場合は手術や薬物療法などで治療を行います。これを放っておくと、約30%の割合で子宮体がんに移行するといわれているので、きちんと治療することが重要です」 このように「これって大丈夫?」と思ったら、すぐに気軽に相談できる婦人科の主治医を持っていると安心だ。 例えば、出血が2週間続き、そこから婦人科を探し始め、予約を試みた結果、数週間先になったとしたら…、もしも大きな病気だった場合、治療がどんどん先延ばしになり病状が進行してしまうかもしれない。更年期世代になったら、頼りになるのは婦人科の主治医だ。
【教えてくれたのは】 小川真里子さん 産婦人科医、医学博士。福島県立医科大学 ふくしま子ども・女性医療支援センター 特任教授。日本産科婦人科学会・日本女性医学学会女性ヘルスケア専門医・指導医。専門は更年期医療学、女性心身医学、女性ヘルスケア。相談やカウンセリングを中心としたケアサポートとともに、最新のテクノロジーや視点を取り入れて、更年期を取り巻く環境や文化を積極的にアップデート。 イラスト/内藤しなこ 取材・原文/山村浩子