<漫画>勉強を“させられすぎて”精神が崩壊する子供たち…後を絶たない“教育虐待”の実態
“教育虐待”が放置されている理由は…
――第3話では、“教育虐待”を受けている女の子が、同じように親に追い込まれた兄から性的虐待される衝撃的なシーンもあります。 石井:漫画では名門校に進学した兄による妹への性的虐待として描いていますが、“教育虐待”によるストレスは、いじめや万引き、あるいは自傷行為など歪んだ形で確実に表に出てきます。受験に押し潰された子供だけでなく、競争に勝ち抜いた子供であっても、無理やり勉強を強いられたストレスは相当なものです。人によっては社会に出た後に、抱え続けてきたストレスが何らかの形で現れることもあります。 ――なぜ、このような“教育虐待”が放置されているのでしょうか。 石井:現状の虐待の概念にうまく当てはまっていないからだと思います。いくら子供のためであっても、親が人格を否定するような言動を浴びせて勉強を強いる行為は、本来は心理的虐待に当たります。しかし、一般の人が考えている心理的虐待とは少し異なるので、見逃されてしまいやすい。また、“教育虐待”はネグレクトと真逆です。子供たちは勉強をさせてもらえている。ある意味で恵まれた家庭に育っています。子供に勉強をさせる親は、正しい親だと世間的に思われていることも大きいと思います。“教育虐待”を受けた人自身が、大人になって社会的地位を手に入れて、過去の体験を肯定してしまうケースも少なくありません。
親自身も「生き方も迷走している人が多い」
――どうすれば“教育虐待”をなくすことができるでしょうか。 石井:やはり“教育虐待”を独立した虐待の概念として認知しない限り、難しいと思います。例えば、子供が見ている前で夫婦が暴言や暴力をふるう行為は、昔はただの夫婦喧嘩で済まされてきました。しかし、今では面前DV(ドメスティックバイオレンス)という子供に対する心理的虐待であり、警察や児童相談所へ通報する義務があります。同じように“教育虐待”という言葉も認知されれば、変わっていくはずです。 ――加熱する中学受験ブームが“教育虐待”の温床になっているのでしょうか。 石井:受験ブームの影響もありますが、親が目にみえる成果を金で買うような風潮が大きいと思います。保育園や幼稚園の頃から知育おもちゃを買い与え、習い事に通わせる。その延長線で、小学3年生くらいから進学塾に通わせて受験勉強を始める。塾側もそれをあおり、子供を合格させれば素晴らしい親、受からなかったらダメ親だと思い込ませる。親は子供のためなら借金してでも金を払いますし、社会全体がどうやって親から金を搾り取るかになっている気がします。 また、親自身もコロナ禍以降、他者と接する機会が失われ、狭い価値観の中でタコツボ化しているように感じます。お受験ママ同士がSNSで繋がっていても、たくさんの情報を得ているようで、実は非常に狭い世界の中で生きている。子育てだけでなく、自分の生き方も迷走している人が多いのではないでしょうか。