<漫画>勉強を“させられすぎて”精神が崩壊する子供たち…後を絶たない“教育虐待”の実態
進学塾に競争心をあおられた親が、問題が解けるまで子供に食事をさせず、トイレにも行かせない。倒れた子供が入院しても、病院で勉強をさせ続ける。そして、ついに親子ともども心を壊し、ストレスはおぞましい形で他者に向けられる……。 漫画『教育虐待―子供を壊す「教育熱心」な親たち』(原作・石井光太、構成・鈴木マサカズ、作画・ワダユウキ)では、目を背けたくなるような衝撃の光景の数々が描かれている。しかし、それらはいずれも現実に起きている“教育虐待”の実例でもある。 ⇒【漫画】子供を壊す「教育熱心」な親たち 第三次中学受験ブームが過熱する中、世間から隔絶された子供部屋で何が起きているのか。漫画の原作者であり、同名書籍で“教育虐待”を明らかにしたノンフィクション作家の石井光太氏に話を聞いた。
今に始まったことではない“教育虐待”
――同名の新書に続き、漫画でも“教育虐待”について世に訴えています。 石井光太(以下、石井):少年院やフリースクールなどを取材すると、子供たちはかなりの割合で何らかの虐待を受けています。しかし、その統計の中に入っていない子供たちもいます。身体的虐待、心理的虐待、性的虐待、ネグレクト(育児放棄)などに含まれない、見逃されている虐待もあって。その一例が教育熱心な親による“教育虐待”です。大抵の場合、“教育虐待”の被害に遭った子供たちが一定数いるのです。 親が子供に勉強をさせることはおかしくありませんが、あまりにも過剰で厳しい場合、心身を壊して苦しむことになります。本人たちもそれが虐待だったと気付いていないケースがほとんどです。表に出てこなかっただけで、今に始まったことではないはずです。
苦しみを言語化することすらできない子供たち
――今年3月から漫画もスタートし、8月7日に第1巻が出版されました。どのような反響がありましたか。 石井:教育虐待を受けてきた人、それを間近で見てきた教員からの反響が大きいですね。専門家の中では、教育虐待は心理的虐待とイコールだという認識はあるのですが、まだ世間的には認知されていません。書籍や漫画を読んで、「自分が親にされてきたことは“教育虐待”だったのだと気付いた」という声が少なくありません。教員からは「よく代弁してくれた」という意見が多いですね。彼らは保護者に「子供に勉強をさせるな」とは言えませんから。 ――原作者として、どのように漫画に関わっていますか。 石井:私がストーリーを書き、それを鈴木さんがネームに起こし、ワダさんが絵にしていくという役割分担です。実際にあった事例をそのままストーリーにしているのではなく、これまでの取材で蓄積したさまざまなケースを一度分解して、エピソードごとに要素を盛り込みながらストーリーにしています。 例えば、「ケース1 教育という名の暴力」の第2話では、“教育虐待”によって洗脳された子供が心を壊して入院しているにもかかわらず、一心不乱に勉強し続ける姿を描いています。実際の取材でも、「子供に何が苦しいの?」と聞いても「わからない……」、「なぜいい学校に行きたいの?」と聞いても「みんな行っているから……」としか答えられない。本人もなぜ勉強しているのかわからない。その子の手首を見ると、ザクザクした傷跡がある。苦しみを言語化することすらできないのです。