阪神が異例のスカウト世代交代人事を断行。スカウトも超変革?!
阪神が、中尾孝義スカウト(60)、北村照文スカウト(59)のベテラン2人と来季の契約を結ばず、今季限りで戦力外となった筒井和也・投手(35)をスカウトに転身させるなどのフロントの世代交代人事を進める方針であることが23日、明らかになった。中尾、北村の両スカウトは、12月上旬までの契約。 今ドラフトでは、桜美林の佐々木千隼投手(ロッテに1位指名)と、1位指名した白鴎大の大山悠輔内野手の両獲りができる可能性があったにも関わらず、佐々木を1位指名せずにみすみす逃すなど、事前の情報不足から、事実上、ドラフト戦略に失敗した。2人の退団は、その問題の責任を問われたわけではなく、スカウトにとって最大の行事であるドラフトを前に、来季の契約を結ばないことを通告していたという。 スカウトは、選手を見る目と、アマチュア界との人脈作りなど、豊富な経験と地道な活動が必要なポジション。スカウト陣の高年齢化に備えて、次世代のスカウトの育成が必要なため、今回、思い切った世代交代人事が断行されることになった。今季、金本監督は超変革を掲げて、大胆な若手起用を行ったが、フロントも数年先を見据えたフロント組織構築を考えて、スカウト人事に手をつけたようだ。 新しくスカウトに転身する筒井は、松山北高から愛知学院大を経て自由枠で2003年に阪神に入団した左腕。主に中継ぎとして活躍、2012年には、58試合に登板した。今季限りで戦力外となったが、その真面目に野球に取り組んできた姿勢が買われた。 ただ、中尾スカウトは60歳で、北村スカウトも59歳。まだ働き盛りでスカウト業を引退する年ではない。中尾スカウトは、専修大からプリンスホテルを経てドラフト1位で、中日に入団。強打の捕手としてレギュラーを獲得、優勝した1982年にはMVPにも選ばれている。1988年に西本聖・加茂川重治とライバル球団同士のサプライズトレードで巨人に移籍して日本一に貢献、その後、西武でもプレー。引退後は、西武、横浜、オリックスなどで主に2軍でコーチを務め、2004年からは阪神でもコーチをして2009年からスカウトに転身。岩崎優、陽川尚将、今季育成からブレイクした原口文仁らを発掘した。 北村スカウトは、現役時代3拍子揃った外野手として活躍した1985年のV戦士。西武、中日とトレードで移籍した後に引退。中日でコーチをした後、阪神にスカウトとしてカムバック。最近では、2桁勝利に乗せた岩貞祐太を担当するなどスカウトとして結果を残していた。 2人共に現役時代の活躍から野球界でも顔が知れているため、スカウト活動もスムーズで、中尾スカウトは2軍でのコーチ経験も豊富でプロで通用する素材を見る目も確かだった。 2人は、嘱託契約であることから、今回、来季の契約を更新しない方向になりそうだが、その経験や人脈、スカウトとしての能力を評価するならば、このタイミングで同時に2人を辞めさせることの説得力に欠け、来季以降のドラフト戦略に大きな影響を及ぼすことが懸念される。広島カープを見るまでもなく、チーム編成の根幹は、ドラフトと育成である。フロントの人件費予算の問題などがあるのかもしれないが、新人スカウトと共に活動を重ねながら、うまく担当を引き継ぎ、世代交代ができなかったものかと、疑問が残る。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)