国民皆保険も破綻、「開業医は儲かる」神話の崩壊…この国の医療はどうなるのだろうか
「無医地区」が急増する
一方、医師の都会流出が進むと別の問題が起きてくる。地方が再び「医師不足」に見舞われるのだ。 それを改善しようと政治家などが介入して医師養成数を高止まりのままにすれば、全国規模では医師の過剰状態が一段と悪化する。現状の医師不足や偏在の解消は、中長期的視野に立って取り組まなければかえって医療が届かない地域を拡大させるという皮肉を招く。 そもそも、現在の「医師不足」の解消施策というのは医師の年齢まで問うているわけではない。少子高齢化が進む中において住民の高齢化が著しい地域では、医師も高齢化が進んでいるケースが少なくない。 厚労省の資料(2020年)によれば、診療所に従事する医師は過去20年で1万8613人増加したが、60歳以上が半分ほどを占め、平均年齢は60.2歳だ。日本医師会総合政策研究機構の試算では2036年の65歳以上の医師数は9万3333人となり、2016年と比べて1.93倍となる。 地方では80代どころか90代の現役医師が少なくない。こうした年齢の医師が経営する診療所は後継者が決まっていないことが多く、それがゆえに超長寿の医師が従事し続けている。医師も人間なので高齢となればいつ亡くなったり、体調を崩したりするか分からない。 高齢医師が1人しかいない地域というのは「医師不足」への逆戻りどころか、いつ無医地区と化すか分からないのである。 つづく「日本人はこのまま絶滅するのか…2030年に地方から百貨店や銀行が消える「衝撃の未来」」では、「ポツンと5軒家はやめるべき」「ショッピングモールの閉店ラッシュ」などこれから日本を襲う大変化を掘り下げて解説する。
河合 雅司(作家・ジャーナリスト)