「通学支援がやっと」 関西の路線バス廃止・減便相次ぐ! バス会社は完全自動運転化まで持ちこたえられるか?
大阪メトロは駅員らをドライバーに養成
大阪府交野市では市南部を走る京阪バスの交野南部線など4路線が2025年3月限りで廃止される。市南部に公共交通空白地域が生まれることから、市は市主体でのバス路線維持に踏み切った。 2025年の大阪・関西万博で会場アクセスにバスを使用するため、関西は大型二種免許を持つドライバー確保が余計に難しくなっていた。そこで、市は講習を受ければ大型一種免許取得者が運転できる国の自家用有償旅客運送事業を活用し、ドライバー確保に入っている。 山本景市長は最悪の場合、大型一種免許を持つ市職員を動員して住民の足を守る覚悟を示していたが、市の広報担当者は 「市職員を動員しなくても路線を運行できるめどが立った」 と胸をなでおろしていた。 万博のバスドライバー確保も苦戦の連続だった。会場となる大阪市此花区の夢洲と市内の主要駅、舞洲に設ける駐車場などを結ぶシャトルバスを走らせる計画だが、ドライバーが集まらない。このため、全国のバス会社に協力を要請するとともに、大阪メトロが駅員ら自社社員に大型二種免許を取得させるなどしてドライバーを確保した。 大阪メトロが集めたドライバーは万博期間中、子会社の大阪シティバスに出向し、ハンドルを握る。大阪メトロは 「全社を挙げて万博に協力するため、車内でドライバーを養成した。確保したドライバー数は約100人になる」 と説明した。
ドライバー確保へ各社が知恵比べ
バスドライバーは勤務時間が不規則で、乗客のクレーム対応など面倒なことが多い。それなのに、厚生労働省の2022年賃金構造基本統計調査によると、平均月収が 「30万円」 を切る低賃金だ。離職する若者が多く、新たなにドライバーを目指す人も限られる。そのうえ、ドライバーの引き抜き競争が激しさを増している。 バス会社は4月の法改正でドライバーの労働時間規制が強化され、従来以上のドライバー数を確保しなければならなくなった。しかし、いくら募集しても人が集まらず、路線廃止や減便をせざるを得ない状況だ。 バブル期には公営バスのドライバーに年収1000万円を超す例が続出し、批判の声が上がったこともあったが、人口減少やコロナ禍で痛手を受けた地方自治体やバス会社に当時のような高賃金を払う余裕はない。新規採用のドライバーや大型二種免許取得者がいる事業者に対する国土交通省や日本バス協会の助成金制度も、まだ効果を上げていない。 そんななか、阪神バスは新規雇用したドライバーに月額6500円の家賃で兵庫県尼崎市の市営住宅を借りられるサービスを始めた。尼崎市がDV被害者らに市営住宅を提供する支援事業に加わり、ドライバー不足を緩和して路線維持を図るのが狙いだ。 路線バスに完全な自動運転ができるレベル5を導入するには、もうしばらく時間がかかりそう。それまでは人を確保するしか路線維持の方法はない。自治体やバス会社の知恵比べが始まっている。
高田泰(フリージャーナリスト)