能登半島地震発生から半年――被災地の高校生とボランティアによる演奏会が届けた希望
2024年1月1日に発生した「令和6年能登半島地震」。最大震度7を記録した未曾有の大災害が起きてから半年が経ちました。 甚大な被害を受けた石川県内では必要戸数の7割とされる仮設住宅が完成し、被災した人々は新しい生活をスタートさせています。しかし、人手不足により崩れてしまった建物の解体作業やインフラ整備などは進んでおらず、復興にはまだ多くの課題が残っています。 そんな中、2024年6月9日、石川県珠洲市にある「道の駅すずなり」で、同市にある石川県立飯田高等学校(以下、飯田高校)の吹奏楽部による定期演奏会が開催されました。 「被災した人たちに元気を届けたい」との思いで企画されたこの演奏会には、吹奏楽部の生徒たちの声がけにより、珠洲市の復興支援に取り組む複数のボランティア団体も参加しました。 今記事では、被災者、支援者の枠を超えて、大勢の観客に感動を届けた演奏会の様子と共に、吹奏楽部の生徒たち、ボランティアそれぞれの復興への思いをお伝えします。
被災地の人々の胸を熱くした、高校生とボランティアによる演奏会
晴天に恵まれた日曜日の午後、道の駅すずなりには、地元の人々をはじめ珠洲市にボランティアで訪れている人たちなど多くの観客が詰めかけました。開催されるのは、飯田高校・吹奏楽部による定期演奏会です。 開始時間を迎えると、楽器の力強い演奏がまちに響き渡ります。部員の数は8名。元々は11名が所属していましたが、震災後に転校を余儀なくされた生徒もおり8名に減ってしまいました。それでも、人数の少なさを感じさせないほどの気合の入った演奏に、観客からは歓声が上がります。 1曲目の演奏が終わると、飯田高校の教頭先生からあいさつがありました。 「コロナ禍の3年間、そして今回の震災を乗り越えてきた生徒たちは、くじけずに今日を迎えることができました。3年生は今日で部活動に一区切りを迎えます。今日はぜひ応援をよろしくお願いいたします」 その後、演奏されたのは新旧織り交ぜた名曲の数々。2010年に飯田高校と統合し閉校となった石川県立珠洲実業高校・吹奏楽部の顧問の先生が編曲したという『われは海の子』には高齢者からの拍手が上がり、シンガーソングライター優里(ゆうり)の大ヒット曲『ベテルギウス』が披露されれば、若い観客の嬉しそうな顔が目立ちます。 また、途中からは技術系ボランティア「DRT-JAPAN(ディーアールティージャパン)」、全国の大学生から成るボランティア団体「IVUSA(イヴューサ)」のメンバーや、日本財団ボランティアセンターと連携する学生ボランティアも演奏に参加。たった8名だったアンサンブルは、何十人もの合唱付き大吹奏楽団へと姿を変え、道の駅すずなりに感動的な音色を響かせました。 そして最後に演奏したのは『希空~まれぞら~』。2015年にNHKで放送された、能登半島が舞台の連続テレビ小説『まれ』の主題歌です。会場には涙する観客の姿もあり、飯田高校・吹奏楽部の演奏が、被災地で奮闘する多くの人々の胸に届いていることが伝わってきました。