能登半島地震発生から半年――被災地の高校生とボランティアによる演奏会が届けた希望
被災地で生きる子どもたちこそが、能登半島の「未来」の希望
今回の演奏会を成功させるためには、ボランティアの方々の力がとても重要でした。その中心人物となったDRT-JAPANの杉下(すぎした)さんに、演奏会に参加した思いを伺いました。 ――演奏会を終えて、お気持ちはいかがですか? 杉下さん(以下、敬称略):実はみんなと一緒に練習ができたのは、たった一度だけなんです。でも無事に成功して良かった。何よりも吹奏楽部の子どもたちの元気な顔を見られて嬉しいですね。ここで生きる子どもたちは未来の希望ですから。 ――ボランティアの方々が演奏会に参加することになったきっかけは、吹奏楽部の大坪さんの提案だったそうですね。 杉下:そうなんです。彼の自宅からクラリネットとオーボエを見つけ出したことを機に仲良くなって、そうしたら「一緒に演奏会に出てくれないか」と。びっくりしましたよ。 僕も昔、トランペットをやっていたことがあったんですけど、それでも40年ぶりくらいでしたからね。でも、自分にできることであれば協力したいと、他のボランティア仲間にも声をかけたんです。 演奏会を終えて、きっと子どもたち自身も勇気づけられたんじゃないかと思います。自分たちにもできることがある、と。自分たちがまきとなって、小さな火を絶やさないように頑張れる。それを子どもたちに感じてもらえたなら最高ですね。 ――能登半島の復興状況はいかがですか? 杉下:まだまだです。そもそも、この災害がいかに甚大なものなのかあまりにも知られていなくて、悔しいです。能登半島に入ったとき、真っ先にやったのは人命救助なんですよ。つまり、最初からインフラなどの復旧作業ではなく、私たちボランティアが「命を救わなければいけない」というレベルだった。 でも、甚大な被害状況をあまり知られていなくて、公的な対応も後手後手になってしまっています。だからこそ、この被災地の実情を1人でも多くの人に知ってもらいたいですし、どうか気にかけてもらいたいと思います。ここでは、未来につながる子どもたちが必死に頑張って生きていますから。
編集後記
能登半島に暮らす人々の力強さと願いが伝わってくる――定期演奏会を聴きながら真っ先に感じたことです。 同時に思ったのは、「彼ら彼女らだけに頑張らせてはいけない」ということ。能登半島地震の発生から半年が経ちますが、復興への道のりはまだまだ遠い。だからこそ、同じ国で暮らす私たちも、この震災を忘れてはいけないのです。 被災地で頑張っている人がいる。それを希望としつつも、私たち一人一人ができる支援を続けていく。それが1日も早い能登半島地震で被災したまちの復興につながるのではないでしょうか。
日本財団ジャーナル編集部