並びを重視した打順の組み方と初戦らしい強硬策。第4回WBCから7年を経て、大舞台でらしさを見せた小久保監督<SLUGGER>
もう一つ、小久保監督らしかったのは「初戦らしく戦わせたこと」だ。 DeNA先発のジャクソンは最速153キロのストレートを軸に腕を振ってきて、チェンジアップとナックルカーブを投げ分けてきた。しかし、初対戦でもあるソフトバンク打線はどんどんスウィングしていった。空振りも多かったし、フライアウトもあった。送りバントをしてもおかしくない場面でも、強行策に出ていて強い振りが目立った。 こちらについては筆者が質問した。 ――打線は初回から振っていってましたけど、振っていけばピッチャーに合っていくなどの意図があったのでしょうか。 一瞬、見たことがない記者からの質問だなという顔をした小久保監督だったが、それでも表情を変えずにこう話した。 「初戦なんで振らないと緊張感が解けないでしょうからね。まぁでも、待てのサインも出しましたし、そこはサイン通りですね」 取材対応とはいえ、自分の意図をどんどん口にしていく。作戦が相手に読まれることを嫌って口をつぐむ指揮官もいるが、先頭に立って自身の哲学を話す小久保の姿勢はリーダーの鏡と言える。選手たちもそんな指揮官について行きたいと思うのだろう。 「2024年型のホークスは日本一になって完結する」 試合前、小久保監督は選手たちにそう語りかけたそうだ。 WBCから7年が経ち、成熟した小久保裕紀監督のリーダーとして姿。日本シリーズが終わるまでの間、まだまだ追い続けていきたいと思う。 取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト) 【著者プロフィール】 うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園は通過点です』(新潮社)、『baseballアスリートたちの限界突破』(青志社)がある。ライターの傍ら、音声アプリ「Voicy」のパーソナリティーを務め、YouTubeチャンネルも開設している。
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