「グレタ」と「ナウシカ」そして「ジャンヌ・ダルク」――人類の危機に現れる異能の少女
「私の言いたいことは『私たちはあなたたちを常に見ている』です」――。9月23日、ニューヨークで開かれた国連気候行動サミット。一人の若い環境活動家がこの言葉から始めた怒りのスピーチは、世界中に強烈なインパクトを与えました。 建築家で、文化論に関する多数の著書で知られる名古屋工業大学名誉教授・若山滋氏も「地球温暖化の問題は環境問題というより文明問題だ」と指摘します。そして、この問題に真正面から向き合っているグレタ・トゥーンベリさんを見ていて、二人の少女を想い浮かべたといいます。若山氏が独自の「文化力学」的な視点から論じます。
グレタ・ガルボではなく
ニューヨークで行われた国連気候行動サミットに登場したスウェーデンの少女グレタ・トゥーンベリ(16)による「人類は絶滅の危機にある」という訴えは、大きなインパクトがあった。なにしろ、温室効果ガスを多く排出する飛行機ではなくヨットで海を渡ってきたのだから、支援団体があるにせよ、筋金入りだ。ウワベだけのキレイごとで済ませようとする各国の代表者も身につまされたであろう。イケメンの人気大臣ていどでは勝負にならない。 注目したいのは、彼女が、特に温暖化のことを知ってからのようだが、さまざまな精神的問題を経験したことだ。「グレタには二酸化炭素が見える」という近親者の表現も取りざたされている。つまりある種、異次元ともいうべき過敏性をもつ人間として発信しているのであり、そのことに対する批判もある。 グレタといえば、高齢の人は「絶世の美女」とされたまま引退し二度と人前に姿を見せなかったミステリアスな女優グレタ・ガルボを思い起こすかもしれないが、僕はジャンヌ・ダルクと「風の谷のナウシカ」という、歴史とフィクションにおける二人の少女を想い浮かべた。本稿は、気候変動の危機とともに、時に現れる異次元の能力をもつ少女についての文化論でもある。 ちなみにスクールバスに乗っているところを襲撃されたパキスタンの女性解放活動家マララ・ユスフザイが国連本部で演説したのも16歳のときで、翌年ノーベル賞を受賞している。