都会か地方か、総合大学と単科大学では… 大学選びで考えたいこと
「都市部の大学か、地方の大学か」「国公立大学か、私立大学か」「総合大学か、単科大学か」……大学を選ぶ際はさまざまな観点から考え、選択していくことになります。長野県茅野市にある公立諏訪東京理科大学と山梨県都留市にある都留文科大学は、ともに地方の公立大学です。両学長が、高校生とその保護者に向けて、大学選びについてアドバイスします。(聞き手は「朝日新聞Thinkキャンパス」の平岡妙子編集長) 【写真】公立諏訪東京理科大学 濱田州博学長
総合大学とはどこが違う?
――公立諏訪東京理科大学は工学部のみ、都留文科大学は教養学部と文学部という人文系2学部で、どちらも専門的な分野に特化した大学です。いろいろな学部がある総合大学と比べて、どんな特色があるのでしょうか。 公立諏訪東京理科大学・濱田州博学長 私は以前、総合大学に勤務していた経験から、公立諏訪東京理科大学には、工学部だけの小さな大学だからこそのメリットがあると思っています。まず、総合大学のような大人数の授業はありません。物理のように工学の基礎となる科目では、かなり少人数で行っている授業もあります。教員も学生も同じ興味を持つ人が集まっているので、専門分野に特化した深い話ができるのもいいところです。 組織としても、大学と学部とが一体となっているので教育方針を共有しやすく、学長と教員が直接やりとりできて現場の状況がよくわかります。そこは総合大学とは違うところだと思います。 都留文科大学・加藤敦子学長 都留文科大学は、教育と、文化・人文系に特化しているので、水準の高い教育研究が可能です。3年からのゼミは専門性が高く、卒業論文は全員必修です。学生は興味のあることを学びながら、ゼミでの議論や卒論で思考を鍛え、根拠に基づいて自分の主張を発表します。そういうきめ細かい教育ができるのは、人文系に特化した大学の強みです。 ただ、学生をきちんと成長させて社会に送り出すためには、データサイエンスや情報リテラシーなどの知識も必要です。そこで2024年度から副専攻プログラムを導入し、理系の学びも選択できるようにしました。学生が何を得て、自分の主専攻にどう生かすのか、成果を期待しているところです。 ところで、濱田先生にぜひお伺いしたいことがあるのです。STEM(Science、Technology、Engineering、Mathematics)教育に、Artsを加えてSTEAM教育を目指しているようですが、Artsとは、具体的にはどんな科目があるのですか。 濱田学長 Artsは芸術というだけでなくて、リベラルアーツ(教養教育)として取り入れています。公立大学になる前は経営情報学部があったこともあり、リベラルアーツとして経営学やアントレプレナーシップ(起業家精神)などを教えています。マネジメントを専門とする3人の教員の授業は必修にしています。 大学のある諏訪地域には企業経営を創業者から受け継ぐ人も多く、それで経営学が必要とされています。教員は地元企業の社長たちと毎月、勉強会を開いています。将来的には他の科目に広げることも考えていますが、基本的には分野が絞られているのが単科大学の良さだと思っています。