「家事がしにくい」「収納が足りない」…一級建築士が明かす、“間取り”で後悔しない唯一の方法
間取りを暮らしに変換する
「間取りで暮らす」は私が名付けましたが、これは住宅設計者や間取り好きな人が自然に行ってきたシミュレーション方法です。やり方はとてもシンプルで簡単です。 「家族全員の一日の動き(動線)を間取り上でイメージする」 たったこれだけです。目の前に間取り図を置いて、ペンなどで家族の動きを書くことで、どのような動線になるのかを可視化できます。また動線だけでなく、そこで何をするのか、何が見えるのか、もイメージするようにします。住宅会社がCGパースなどを作製してくれた場合は活用しましょう。 「間取りで暮らす」のにかかる時間は、個人差はありますが、30分から60分程度ですから、それほど大変な作業ではありません。長ければ40年から50年程度は暮らす住宅の購入や家づくりなので、それくらいの時間をかけてシミュレーションする価値はあります。 このように、間取りを暮らしに変換することができれば、納得した上で家を決めることができます。 「暮らしを理解するために、動線のシミュレーションだけでいいのか?」と疑問に思う方もいるかもしれません。一般的に動線といえば、料理や洗濯などの「家事動線」を思い浮かべる方も多いと思いますが、収納やゴミ捨て、帰宅・出宅、朝の準備、入浴や排泄、介護など様々な場面で人は動きます。これらはすべて動線で表すことができるので、「間取りで暮らす」ことでシミュレーションできます。このように動線は入居者の暮らしそのものといってよいでしょう。 また動線だけでは空間の開放感やデザイン、質感などはわかりませんが、それらは実物を確認すればわかりますし、注文住宅なら図面やCGパース等で理解できます。住宅会社や不動産会社は、そういった「目に見える部分の説明」は得意なので、任せるようにします。私たち建築士は、彼らが説明してくれない「動線」を理解することに注力します。
「変換」と「改善」を繰り返す
間取りで暮らして判明した問題点はリストアップして、解決したい順に優先順位をつけます。注文住宅やリフォームを検討している場合には、このリストを元に住宅会社の担当者やセカンドオピニオンに相談するとよいでしょう。改善された間取りを提案してもらえたら、再度、間取りで暮らしてみて問題点がないかをチェックします。これを繰り返すことで、間取りを理想に近づけます。 建売住宅や分譲マンションなど間取り変更ができない場合は、家具配置や住まい方の工夫で、問題点をクリアできるかをシミュレーションしてみます。ここまでが、間取りを暮らしに変換する方法の解説です。
with online