「家事がしにくい」「収納が足りない」…一級建築士が明かす、“間取り”で後悔しない唯一の方法
日本の住まいの満足度は33%……不満の理由は”間取り”でした。一見すると、おしゃれで素敵そうに見える間取り。でもそこには大きな落とし穴が隠れていることも。住んでみないとなかなか見えてこない隠れた暮らしにくさ。『この間取り、ここが問題です!』では、いままで3000件以上の間取りを診断してきた一級建築士・船渡 亮氏が、25の具体的な間取りからその問題点を指摘。より住みやすい間取りを提案します。 【写真を見る】50平米に家族5人暮らしのリアル…「寝る場所」どうしてる?
間取りで後悔しない唯一の方法
不動産直販サイトFLIEが、戸建てやマンションを購入した人を対象に行ったアンケートによると、家に何かしらの後悔・不満がある人は全体の84%、うち間取りで後悔した人は41%になります。 その割合は、戸建て購入者(注文住宅を含む)の場合、13%もアップするそうです。この結果を読む限り、住宅購入経験者には間取りで後悔している人が多いようです。では、どのようにすれば、この後悔を減らすことができるでしょうか? その解決策は、後悔するに至ったプロセスを考えるとわかります。住宅購入者は、自分たちの現在の問題・不満を解決できるだろうと期待して住宅を購入します。分譲マンションや建売・中古住宅なら内見してから購入する場合が多いので、「引き渡し時」の後悔は少なそうですが、注文住宅や販売時に建設中の新築分譲マンションの場合は、「計画時の想像と違った」と感じる人がいるかもしれません。 新居に荷物を搬入して、新品の家具を配置した時に、「あれ、おかしいな?」と思う人も多いはずです。家具を置くと狭く感じる、置く場所がない、ということが起こります。さらに1年間暮らしてみて、家事がしにくい、収納が足りない、夏の西日が厳しい、近所や通行人からの視線が気になるといった不満も出そうです。 そして数年経ち、子供が思春期になると家族の暮らしに変化があります。部活動や塾で帰宅時間が遅くなり、個室を与えられた子供は就寝も遅くなるので、家族内でのプライバシー確保や音問題が表面化します。 さらに老化や病気、事故などで体が不自由になった場合には、階段や段差があることで暮らしにくくなり後悔につながることも考えられます。 ここまでは家族の変化ですが、近隣環境の変化からも大きな影響を受けます。隣地の建て替えや駐車場が高層マンションになるといったことで、日当たりや眺望が著しく悪化し、資産価値が下がるということもあり得ます。また地震や水害・土砂崩れといった自然災害によって、家が破損し家族の生命が危険にされることもあります。このようになると、後悔ではすまされません。 こういった問題は、数年から数十年間、暮らしてみてわかることですから、とかく「家って暮らしてみないとわからないよね」と一言で片付けられがちです。これは裏を返せば、「事前に暮らしてみれば間取りの問題点もわかり、後悔も減る」ということです。少なくとも暮らしの問題点を理解した上で、住宅購入や家づくりができるので、「こんなはずじゃなかった!」という思いをしなくてもすみます。 とはいえ、事前に暮らしてから家を購入することは可能でしょうか? 賃貸住宅なら、暮らしてみて気に入った際には所有者に譲ってもらえるように交渉できそうです。注文住宅の場合、請負契約してから工事が開始するので事前に暮らすことはできませんが、兵庫県にあるエーアイ株式会社が提供する「間取りを原寸大で再現するサービス」を利用すれば、実際に歩き廻って家の中をイメージすることができます。 ただこれらはお金と時間がかかりますし、再現性が高い方法とは言えません。また数十年間住むという視点で考えた場合、それだけで問題点を発見するのは難しそうです。 じつはもっと簡単でお金がかからない方法があります。手元に間取り図があれば、いつでもどこでも誰でも実践可能です。それは、「間取りで暮らす」という間取りのシミュレーション法です。