名門小学校・元校長が教える、子どもが勉強するのは何のため?「良い生活を送らせるためだけではない。親が学ぶことの意味を忘れると、子どもは苦しくなる」
文部科学省が実施した「令和2年度 家庭教育の総合的推進に関する調査研究」によると、子育ての悩みは「しつけの仕方が分からない」「生活習慣の乱れが不安」と回答した人が4割近く。そのようななか「親の価値観が、子どもの価値観の土台になる」と話すのは、学校法人洗足学園小学校前校長、現理事の吉田英也さん。今回は、吉田さんの初の著書『心を育てる中学受験-全員が中学受験する洗足学園小学校が大切にしていること』から、子どもの心を育てるヒントを一部ご紹介します。 【書影】名門小学校・前校長が明かす「人生の役に立つ」受験のすすめ。吉田英也『心を育てる中学受験-全員が中学受験する洗足学園小学校が大切にしていること』 * * * * * * * ◆教育の最終目標は「子どもの自立」 子育ての最終目標は何でしょうか。それは「自立」です。 親に依存していた子どもが自分の価値観を持ち、自分自身の幸せを自分の基準で見つけ出す。そのために親からの自立は必須です。そのお手伝いをするのが、学校という社会です。 親からの自立は「経済的自立」と「精神的自立」がありますが、経済的に自立する前に、精神的な自立が先に始まります。 精神的に自立するためには、論理的に人と話し合い、社会の中で孤立することなく過ごしていくことが求められます。これは誰もが小学校に入ると経験すること。つまり精神的自立は小学校時代にスタートするのです。 小学校は、子どもにとって初めての社会です。幼稚園や保育園では、自分以外の人間が存在するということを覚えますが、どうすれば人間関係を円滑に進めていけるかを考えるところまではいきません。 親の価値観の中だけで生きてきた子どもたちは、小学校で初めて、他人の価値観に触れることになります。 家庭の中でそれまで王子様、お姫様のように育てられた子どもにとっては、最初のカルチャーショックとなるかもしれません。けれども、同世代と折り合いながら触れ合うのは、楽しいことでもあるはずです。
◆点数で評価される世界に 国語、算数、理科、社会という勉強が始まり、教師という立場の人から教わり知識を吸収していくのも、本来はとても楽しいことです。 教科書は未知の世界への扉です。1ページめくるたびに新しい世界に遭遇することになります。 その一方で点数で評価される世界に突入し、親も初めて子どもの成績に触れることになります。 これは、子どもにとって厳しいことです。人と比べて自分はできる、できないといった自己評価や他己評価も味わうことになります。 もちろん、学校で勉強する内容全てが、社会で必要とされるわけではありません。 現実に、私たちは2次方程式の解き方を知らないと生活できないということはありませんし、歴史上の人物の名前や年号を知らないと仕事ができないわけではありません。他の教科でも同じです。 それではなぜ、膨大な時間を使って勉強するのでしょう。また、なぜ私たちは子どもたちに勉強をさせるのでしょう。
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