【実録 竜戦士たちの10・8】(36)大砲候補の大豊泰昭、一本足打法に取り組み2年目、『40本塁打』を目標に掲げる
◇長期連載【第2章 それぞれの再出発】 中日で唯一、年内に契約更改を済ませていなかった大豊泰昭が統一契約書にサインをしたのは1994年1月6日のことだった。球団の提示額は6500万円。これに対して、大豊の希望額は7000万円。500万円の開きに頑として首を縦に振らなかった大豊も、この日の交渉時間はわずか40分。前回から100万円増の6600万円であっさりサインした。 「7000万円? そのつもりで来たんだけどこれ以上遅れると自分も気持ちがよくない。もうトレーニングも始めているし、そちらに集中したいからね」 年が明けた3日から愛知県東郷町の愛知池で単独自主トレを開始。急勾配の斜面を利用しランニング、ダッシュ、ストレッチと約2時間、汗を流し続けている。落合博満という打線の柱を失い迎える新たなシーズン。その穴を埋める大砲候補として、高木守道監督が秋から度々、名前を挙げてきたのもこの男だった。 「落合さんがいてもいなくても、今年はみんなが『やらなきゃいけない』と思っていたはずだから関係ない。でも、(落合が)いなくなって中日が弱くなったとは言われたくない」 こう言いきると、続けて「落合さんがいるときから、いつも負けるものかと思ってやってきた。それでも落合さんには負けてばかりだったけど、去年はホームラン(大豊25本、落合17本)で勝っている」。巨人の新4番となる落合への対抗心ものぞかせた。 一本足打法に取り組み2年目。「まだ30本を打ったことのない僕が言うのもおかしいけど」と前置きしながらも、掲げた目標は自己最多(91年の26本塁打)を大きく塗り替える40本塁打。「そこを目標にしてやれば、それに近い数字は出せると思う」と話した。 大豊のサインで中日は全選手の契約更改が終了となったが、チームの年俸総額は約15億円(外国人を除く)。2億7000万円の落合が抜けたものの、山本昌広、今中慎二ら大幅にアップした選手も多く、前年より4%ほど増えた。これは12球団では6番目。1位の西武、2位の巨人が日本のプロ野球史上初めて総額20億円(同)を突破したのもこの年だった。=敬称略、金額は推定
中日スポーツ